第八話 その時既に…

 中間試験も終わった。高校生になって初めてのテストだったが割と簡単だった。

「これなら赤点の心配もないだろう、イワン?」

「陽一クン、キミはのん気でいいでスネ…。ワタシは点数が悪いと姉に怒られマス。それが赤点でなくてもデス」

「そうなのか…? いや、あの姉のことだからそうなんだろうな。あの一件以来二度と怒らせないと俺は誓ったぜ。というか関わりたくないな。お前の姉ちゃん、常に怖いわー」

 屋上で終わったテストのことを話す。

「ボコボコにされたら[アテラスマ]に傷を治してもらう予定デス」

 陽一は笑った。

「まだ結果も帰って来てないんだぜ? 今からそんなこと言うなよな」

「でも問題用紙に答えを写してきまシタ。それで自己採点すレバ…」

「よせイワン。その先は聞きたくない」

「そうでスネ。そうしましョウ」

 試験はもう終わったんだ。終わったことをあれこれ後悔しても遅いのだ。

「とこロデ」

 イワンが話を切り出した。

「キミのクラスにいたあの三人組、今日も学校に来てませんでしたヨネ。一体どうしたんでスカ?」

「ああ、宮本と石島と高田のこと?」

 確かにあの三人組は最近、テストの前あたりから急に学校に来なくなった。担任によると家にも帰ってないらしく、捜索願が出されたとか。

「前も言ったろ。馬鹿は放っておくに越したことは無いよ。どうせ無計画に家出したんだろ? そのうち帰ってくるさ。でもテスト受けなかったのは間違ってるな。内申点を考えれば馬鹿でも受けるべきだ」

 不良たちのやること考えていることは良くわからない。きっとかっこよく見えるからとかどうでもいい理由だろう。

「親不孝者は死ななきゃ治らんのかもねえ。[アテラスマ]でも治療できないだろう」

「陽一クンも結構キツイこと言いまスネ」

「そうか? でも誰かを悲しませるようなことはしないべきだと思うぜ? お前だって姉を困らせたくはないだろ?」

「…まあ姉の場合、困るというか怒りまスネ。間違いナク」

 二人とも腹を抱えて笑った。

「言えてるぜ。あの鬼のような形相、思い出しただけでも鳥肌が立つ…」

「そう言えば陽一クンはクラスに馴染んでないんでスカ?」

「どうしたいきなり?」

「キミのクラスの八幡久姫って人が割としつこいんでスヨ。どうすれば陽一クンがクラスに馴染むかトカ、どういう話題なら会話に混ざれるかトカ…」

 あの委員長、そんなことしてるのか…。

「真面目な人も放っておこう!」

 陽一はそう提案した。

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