第八話 腐っても偉業だった
冬休みは閉寮する。だから荷物をまとめて実家に帰る。
「そう落ち込むなよ。これからどっかで化石発掘に行けばいいじゃないか」
「それはわかってるぜ…」
元気がないのは誤魔化せない。
「妹が呼んでるぞー。早くしろだってよ」
そう多くない荷物をまとめて部屋を出た。そして男子寮の入り口に向かった。
「待て」
大きな声が聞こえた。辺りを見回すが、自分にしか聞こえていないようだ。しかも声の主も見つからない。
「見ろ」
またした。一体何だ? 誰が話しかけている?
見ろって言ったって、玄関で見るべきものなんて掲示板か郵便受けぐらいだ。
まず掲示板を確認した。特に変わったことはない。次に郵便受けを覗いた。封筒が一つ入っている。朝見た時には何も入ってなかったはずだが? 取り出すと自分宛てだ。しかし名前だけ書かれていて、他には何も書かれていない。住所も無しによく届いたものだ。
「なんだコレ…。あ!」
中身を見て驚いた。宇宙人に返したはずの琥珀。何故これがここに? 中には手紙が一通入っている。ちょっと汚い字だが、宇宙人が書いたものだった。
生物学の発展に貢献した者に、一時の友好の証を授ける。これは我が星と地球人が接触した証拠である。
それしか書いてなかった。
琥珀を握りしめた。あの宇宙人、全部返してもらうとか言いつついきな計らいしてくれるじゃないか!
「こんなことしてくれるなんてよ」
星や種族が違っても情があるのだろう。そうだ、俺はあの宇宙人の星の科学の発展に貢献したんだ、これを持つ資格はある。現に宇宙人が与えてくれた!
「兄さん! 早く帰りましょう!」
「おう! 待たせたな優乃! 今行く!」
準は、さっきまでの低いテンションがまるで嘘みたいに元気そうであり、妹と共に寮を出た。
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