第08話 あのとき気付いていたら
先輩とした話し合いの翌日、僕は早速動き出した。
まずは、初恋の彼女と話をしなければと、隠れて会うのは、元親友に不信感を与える
のはわかっているが、公には出来ないので、前回と同じく放課後、校舎裏に呼び出すことにした。
放課後、校舎裏に着くと、僕より先に彼女は着いて待っていたようだ。「待たせてごめん。」と一言謝罪し、早速話を始めることにした。
「僕が悪いのはわかってる。でも、どうしたいかは君に聞くしかなくて。申し訳ないけれど、結論から聞かせて。君はどうしたい?」
結局は彼女がどうしたいかしかないのだからと結論を促した。
「わからないの。「元親友」くんが好きなのは間違いないと思う。それでも、この前言ったようにあなたのことも気になってしまう私がいるの。おかげで「元親友」くんとキスさえ出来なくて。あなたのキスが消えてしまいそうで、忘れてしまいそうで。でも、考えてたの。あなたへの気持ちがどうなのか。どうしたいのか。そしたら、ひとつ浮かんだの。「僕」くん、デートして。そして気持ちを確かめたいの。」
彼女は僕とデートして、僕への気持ちが何なのか確認したいみたいで。断る理由もないので僕は「わかった。」と了承した。
予定は今週の土曜日、場所は「○○遊園地」。待ち合わせもそこにした。
僕の初めてのデートは、初恋の彼女とすることになった。嬉しいような、申し訳ないような、悲しいような複雑な気持ちだけど、少しでも前に進めればいいなと僕は思う。
週末土曜、僕は約束通り、「○○遊園地」へと向かう。着いたときには、彼女はもう来ており、白いワンピースに麦わら帽という純少女という感じの出で立ちでとてもかわいらしかった。別に嫌いになったわけでもない、初恋の彼女の素敵な姿を見て、僕の心は一瞬飛び跳ねてしまう。
「おまたせ、「彼女」さん、とても可愛らしいね。」
「ありがとう、ささっはやくいこっ」
彼女は僕の手を引き、遊園地へと走り出す。
彼女と一緒にいろんな乗り物やテーマパークで遊ぶ。彼女はいつもの物静かな感じではなく、幼い少女のように、元気いっぱいな感じだった。そう、僕の知らない彼女だった。
「いつもと違って元気な感じだね。」
「本当の私はこっちかもしれない・・・かな?学校では猫かぶりかも。」
彼女はそう言って微笑む。
彼女は僕といて楽しんでくれてるのだろうか?
僕は彼女といて楽しんでいるんだろうか?
僕はところどころでどうしても先輩を思い出し、先輩と遊ぶ風景を考えてしまう。初恋の彼女が霞み、先輩がくっきりと浮かんでしまう僕の脳裏。僕の心の結果ははっきりしてしまった。
それはきっと時間が僕の心を変えてしまったのだろう。出会いが僕を変えてしまったのだろう。
ひとりでいた屋上で僕の心をすくい上げてくれた先輩。何が気に入ってくれたのかすぐそばにいてくれて、いつもの微笑みで僕を和らげてくれた先輩。罪に苦しんだ僕の手を引いて、出かけた別の世界。
そして今日の出来事ではっきりした先輩への想い。
では、初恋の彼女は?
わからないわからないわからない・・・
ごめん、ごめん、ごめん、、、ごめんなさい
ふたりで観覧車に乗った。今日のデートの最後の乗り物。そう、彼女が願ったこと。
「お疲れ様、「彼女」さん今日はどうだった?」
「うん、おつかれさま。今日はありがとう。わかったこと・・・あなたの顔を見ているとわかった・・・私のことをもう見ていないって。はははっ私もなんで気づかなかったんだろうね。あなたが見ていてくれたときに。気付いていたら、今が変わっていたかもしれない。3人で仲良くいれたかもしれない、いや今更かなあ。
でも、私は3人でいる時間が好きだったみたい。あなたを失うと3人の時間が本当になくなってしまうから。だから、あなたに執着してたのかもしれない。そして、あなたの思いを知って、キスを知って好きになってしまったのかな。ふたりを好きになるって私も人のこと言えない。最低だなあ。」
彼女はそう言いながら、上を向いて大粒の涙を流す。
「ごめん。僕には今、君を慰めることさえ出来ない・・・本当に最低なやつだ。ごめん。」
「ううん、わかってるから・・・ただひとつ、お願い。「親友」くんとまた仲良くは出来ないかな?」
彼女は僕にお願いごとを1つ言った。
「わかった。できるかぎりのことはするよ。」
「うん、ありがとう。。。」
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