【解説】■緊急■救出作戦:中央情報局特殊作戦グループ (C)Copyrights 2019 中村尚裕 All Rights Reserved.

中村尚裕

1.進入 より

【作戦立案の背景】


○本作戦の目的は、中央情報局の現地協力者(要するに内通者)の身柄保護、及び国外救出。

 内通者は発見・特定されてしまうと排除される危険にさらされるため、これを隠密裡に脱出させるのが本作戦の成功要件。


○本作戦は、諜報網構成員に対する暗黙のメッセージを発する意味合いを持っている。

 即ち、「現地協力者であれ、情報局の協力者を見捨てることはない」という意思表示。

 よって本作戦に関しては、中止も出し惜しみも有り得ない。条件が許す限りの戦力を投入する。


○背反条件としては

 (1)現地協力者の殺害を防止する観点から、救出まで時間的猶予は極めて限られている。

 (2)エマノン共和国および有志連合に本作戦が露見してはならない。

 ゆえに少数精鋭の即応部隊による隠密作戦を旨とする。


○本作戦は国際法違反の越境行動を大前提とするため、存在すら秘匿すべき非正規作戦に属する。


○非正規作戦であるため、介入の証拠は残さないことを最優先する。

 目撃される危険を最小限に抑えることはもちろん、証拠となる痕跡は、これを徹底して隠滅するのを行動原則とする。

 例えば薬莢については、銃に薬莢受け(薬莢回収ケース)を装着し、現地には残さない。


○以上の要件から、

 (1)機動性を得るため、作戦行動としてはヘリボーン(※)を基軸とする。

 (2)隠密性の要求を鑑み、部隊は匍匐飛行(※)で対空レーダ網をかいくぐり、目的地に対して進入・離脱する。

 (3)人質となっている現地協力者を奪還するため、展開する兵力は近接戦闘(CQB ※)を前提として選定する。

 (4)出動までの時間を最短化するため、実行部隊として中央情報局の内部部局である特殊作戦グループ(SOG)を選定する。


 ※ ヘリボーン(Heliborn):ヘリコプタ(広義ではVTOLも含む)で目的地まで兵員を高速輸送し、そこで兵力を展開する作戦行動。

 ※ 匍匐飛行(NOE、Nap Of the Earth):地形の凹部を縫って対空レーダ網をかいくぐる技法。地形の凸部でレーダ波が遮られるため、極めて探知されにくい。ただし超低空飛行でもあるため、墜落の危険と紙一重の高等技術。



【固有名詞】


○エマノン(Emanon)共和国:内戦直後の国家。仮想敵国家勢力が中心となって、追従勢力を束ね暫定政権を樹立させている。

 ・エマノン情勢:直前まで内戦状態だったためもあり、有志連合軍が『平和維持活動』の大義名分を掲げて駐留している。

 ・マルガナ(Margana):エマノン北部の地方都市。本作の舞台。

 ・ENB(Emanon National Broadcast)放送:エマノン国営放送。

 ・エマノン独立評議会:エマノン共和国で活動する反政府ゲリラ組織。


○有志連合:仮想敵国家群が組織した、エマノン共和国『平和維持』のための連合。国連安全保障理事会の決議は経ていない。合衆国は利害が対立しているため不参加(むしろ反対の立場を取っている)だが、表向き『平和維持』活動には正面切って反対はしにくい。


○CNN(Cable News Network):合衆国資本のニュース・ネットワーク。語源となったケーブルTVはもちろん、国際衛星放送チャンネル網(CNNインターナショナル)も運用している。



【編成】


○所属:中央情報局特殊作戦グループ(SOG:Special Operation Group)。

 ・本作では現地協力者が事件に巻き込まれたため、対処行動へ至るまでのタイム・ラグを最小化する目的で動員された。

 ・構成員は国内の特殊部隊出身者であるため、練度としては高水準を期待できるという判断。


○出動部隊

 ・地上部隊:陸上作戦の実行部隊。

 ・航空部隊:航空輸送部隊。ただし正規装備を保有せず、作戦に応じた機体で実行部隊を輸送する。今回はエマノン共和国の隣国駐屯部隊より、速度と運用の柔軟性を重視してMV-22Bオスプレイを調達しての作戦参加。

 ・海上部隊:海上作戦の実行部隊。今回は待機。


○階級:特殊部隊の出身者であるため、階級は比較的高い。

 ・分隊長(班長兼任):曹長または一等軍曹。

 ・班長:二等軍曹、三等軍曹(いずれも略称:軍曹)または伍長。

 ・兵:特技兵。兵としての最上位。空挺降下などの特殊技術・資格を保有する兵を指す。作中の分隊では全員が特技兵以上の資格を保有している。



【暗号名】


○ゴスホーク(Goshawk、オオタカ):狙った獲物は逃がさない、しぶとさを見せる鷹。


○フォネティック・コード:文字を音声で誤解なく伝えるためのコード。以下はNATO版。

 ・A:アルファ(Alpha)

 ・B:ブラヴォ(Bravo)

 ・C:チャーリィ(Charlie)

 ・D:デルタ(Delta)

 ・E:エコー(Echo)

 ・F:フォックストロット(Foxtrot)

 ・G:ゴルフ(Golf)

 ・H:ホテル(Hotel)

 (以下略)



【主要登場人物】


○登場人物は〝ゴスホーク+班コード+番号〟のコードで呼び合う。班コードはアルファベット(フォネティック・コード)、番号は班長が1、班員が2(二名一班)。ただし〝ゴスホーク〟内では〝班コード+番号〟の呼称を使用する。


○【第2分隊〝ゴスホーク2〟】

 ・曹長/〝エコー1(Echo 1)〟:曹長。第2分隊の指揮を執る。本編の主人公。

 ・〝エコー2(Echo 2)〟:特技兵。


 ・〝フォックストロット1(Foxtrot 1)〟:二等軍曹。

 ・〝フォックストロット2(Foxtrot 2)〟:特技兵。


 ・〝ゴルフ1(Golf 1)〟:一等軍曹。狙撃の観測手。

 ・〝ゴルフ2(Golf 2)〟:特技兵。狙撃の副担当。


 ・〝ホテル1(Hotel 1)〟:伍長。狙撃の観測手。

 ・〝ホテル2(Hotel 2)〟:特技兵。狙撃の主担当。


○【第1分隊〝ゴスホーク1〟】

 ・〝アルファ1(Alpha 1)〟:上級曹長。


○【情報管理官】

 ・女:第2分隊に随行する情報管理官。人質確認のため〝ゴスホーク〟第2分隊に同行する。

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