最終日(後編) 後夜祭の花火①

その後、教室には時計の秒針が動く音だけが響き渡っていた。


「ごめん。ちょっと考えたいから、明日まで待ってもらってもいい?」


 ちょうどそう言ったくらいだったか。文化祭の終了を告げるチャイムが鳴った。


「行こうか」


 そう言って二人で校庭後夜祭会場へ向かった。クラスごとかと思ったけれど、そういう訳でもなく適当に並んでいる感じだったので、那智と二人で見ていた。

 だんだん空も暗くなり始め、ついに後夜祭で花火を上げるらしいと聞いた。その時那智が


「明日って言ったけどさ、今言ってもいい?」


 と話を切り出した。


 最初は直ぐフラれるつもりだったけれど、明日と言われた時に真剣に考えてくれてることが単純に嬉しかった。その時に頭に執行猶予学びたと安堵した、と同時に意識してもらえる時間が増えたので、最後の悪あがきができると思った。

 しかし、どうせフラれるなら早くフラれた方が楽だと思い直し、少し躊躇いつつOKした。

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