3日目前半 春隣②

 さやかがそう言うと、那智の顔がさやかの顔に近づいた。口が触れるか否か・・・・・・



 キーンコーンカーンコーン



 授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。それにビクッと身体を震わせ起き上がる。・・・・・・なんだ、夢か。


「起立!礼!」


 HR長の挨拶が終わると途端に教室がざわつき始める。先程から心臓が早鐘のように脈をうっている。けれど、本物の、の那智はこんなことはしないだろうから、気にしすぎるのも良くない。


 今日は部活もないので足早に昇降口へと向かう。階段を降りきると、壁に寄りかかってスマホをいじっている那智を見つけてしまった。

 夢で見た光景がフラッシュバックし、鼓動も速くなる。気づかれないように前を通り過ぎようとしたが、それは叶わなかった。


「お疲れ」


 夢の中で見た那智の顔が頭から離れず、いつも通りに接することができない。


「お、お疲れ。誰か待ってるの?」


 声が緊張で震えてしまう。


「中学の時同じ部活だった先輩」


 どんなに考えないようにしても夢を意識してしまい、顔を見ることができない。


「・・・・・・さやか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る