大学で、片思いしていた女の子たちに次々再会した

さばりん

第1章 出会い&再会編

第1話 俺の今好きな人


 俺、羽山弥起はやまやおきは、都内にある某有名大学の入り口にリクルートスーツ姿で立っていた。


「ついに……夢じゃないんだな……」


 しみじみとそんな独り言が漏れてしまう。

 高校3年生まで部活一筋で頑張ってきた。3年の春に引退してから約10カ月。死ぬ物狂いで頑張った受験勉強の記憶が頭の中に蘇る。毎日吐きそうになるほど覚えた英単語や文法の数々。毎日泣きながら覚えた歴史上の人物名。何度も敬語に苦しんだ源氏物語。

 膨大な量の勉強をこの一年間、自分を追い込んでやってきた結果がようやく報われた。


 見事俺は現役で第一志望の大学に合格し、今日から新1年生として4年間の大学生活がスタートする。


 俺が通っていた高校は、定員割れするような底辺高校だったので同じ大学に進学してきた奴は俺一人。つまりは今日ここには知り合いはいない。また新たな人たちとの出会いを通じて、新たな学校生活が始まる


 俺は大学生になるまで部活一筋…という訳ではないが、そこそこ普通の青春を送ってきたとは思う。


 小学校の時はサッカーのクラブチームと受験勉強に励み、中学は私立の中高一貫校に入学した。中学では部活動に励んだ。だが、そこから暗黒時代を経験し、訳あってエスカレーター式の高校へは進学せず、別の県内の高校へと入学した。高校でも部活に入り、体育祭や文化祭、修学旅行と人並みにそれなりには謳歌してきたつもりだ。


 だが、どこカテゴリーにおいても、俺にはあまり芳しくなかったイベントがある。それこそが、恋愛イベントだ。

 

 これまでの小・中・高では、どの時期にも好きな人はいた。告白をして振られてしまったこともあれば、片思いのまま時が過ぎていってしまい、後悔している人もいる。今まで彼女が出来たことはなくはないが、いつの間にかその記憶も黒歴史となってしまい、気が付けばここまで引きずって大学生になっていた。


 知り合いが誰もいないこの状況だからこそ。ここから過去の自分の不甲斐ない歴史を払拭して、次こそは好きな女の子を見つけて、その子に告白してOKを貰い彼女を作り、幸せな大学生活を謳歌するのだ。


 おい、小・中・高の同級生聞いているか?俺は今からきらきらと光輝くこの大学生活を思う存分楽しんで、可愛い彼女を絶対に手に入れてやるぞ!


 そんなワクワクドキドキするような気持ちを胸に秘めながら、俺はその大学の敷地内へと足を踏み入れた。



 ◇



 それから、早1カ月が経過した。


 俺はいつもの授業の教室へと向かい、新しくできた友達の元へと向かう。



「おはよう」

「おっす、やお!」

「弥起、おせぇぞ!」


 一言詫びながら、取っておいてくれた席に座る。


 既にあだ名で俺のことを『やお』と呼んでいる黒髪美男子は、橋岡啓人(はしおかけいと)、見た目は爽やかそうだが、かなりの人見知り。


 その隣で白に近い金髪に髪を染めて、ビッチリとワックスで髪をセットしているお調子者そうな男は、船津早海(ふなつはやみ)。本人曰く、名前が女子っぽいのが嫌で髪を染めたとか・・・


 俺が席に着席すると、後ろから肩をツンツンと突かれた。振り向くと、そこには二人の女子生徒が俺に向かって手を振っていた。


「おは~」

「おはよう、羽山くん」


 左側のあどけなさが残る可愛らしいショートボブの女の子は乙中美央(おとなかみお)、他大学に彼氏持ちのスポーツ大好き美少女。

 そして、その隣でにこっとはにかんでいるセミロングの女の子が、俺が今絶賛片思い中の女の子、西城美月(さいじょうみづき)だ。

 あぁ、今日もキラキラした笑顔で可愛いな。


「おはよう、乙中、西城さん」


 ここにいる俺を合わせて5人のメンツが、新しく出来た友達だ。まあ、高校の時と違って、大学ではクラス分けなどなく、自分で授業をある程度組むことが出来るので、各々いたりいなかったりするが、いわば今つるんでいる相手といった方が正しいだろうか?そんな感じで、今は友達も出来て、本格的に楽しい大学生活を送っていた。


 そして、今絶賛片思い中の西城さんにいつか告白をして、OKを貰ってやるんだ!

 そう勢いづいていた。

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