はじめてのつかいま

(あ゛~やっとやすみだ~…。やっとまともに読める)


 優人は朝食をモソモソ食べながらそんなことを考えていた。今日から夏休みが始める。


  (そーいやたかしの野郎はハワイに行くとか抜かしてたな。こんなくそ暑い季節にさらに熱いとこ行くとか正気とは思えないぜ)


  朝食を食べ終え、たどたどしい足取りで近所にある裏山へ向かった。


 そして裏山でを行いながら「使い魔(入門)」を開き読み始める。


『使い魔を従える方法は大まかに2通りある。まず1つは攻撃して弱らせておとなしくさせてからパスを繋ぎ使い魔にするというもの。これは1番簡単な方法だがかなり難しい方法でもある。戦う必要があるわけだから命がけになるわけだ。じつは自分の力が相手より大きい場合は強引にパスを繋ぎ使い魔にするという方法もあるが、そんなことができるのは一部の強者か、相手が恐ろしく弱い生物に限られるから、あまりお勧めはできない。2つ目の方法は使い魔にしたい生物と信頼関係を築くことである。これは非常に難しく、犬や猫のような身近な動物なら、すぐとは言えないがさして時間はからないと考えられるが、野性の魔物(あぁ、やっぱいんのか)のような凶暴な生物とは信頼関係は築きにくく、2番よりも1番の方法を選ぶ人が多いのはそのためである』


「ぴーぴー!」モグモグ

(まーそんなうまくいくわけないよなぁ、ハァ…)

「とりあえずやれるだけのことはやってみよう」


 そう言って手にしているそれは……。


 アニマルトラップ!あと餌!終わり!これを仕掛けてまた明日!以上!


「ほんじゃーなー」

「ぴばー!?」


 次の日!!!


「わー!わー!」

「………えー」

「ぴー……」


 昨日仕掛けた罠に白い毛並みのウサギが一羽かかっていた。


  (かかるのか…)


 まったくと言っていいほど捕獲できるとは考えていなかったので、捕獲できてしまってかえって困惑している馬鹿が一人…。


  「わー!わー!」

「え、え~と………と、とりゃー!」


 両手に魔力的なものを込めて、力強く手を突き出すと、ピカッと閃光が走り、そして…………






「ただいま~」「あらおかえr わ!ゆう!頭のそれ何?」


 優人の頭の上にある白い毛玉、よく見るともぞもぞと動いている.


「つかいま、名は白玉でおじゃる」

「えぇ~~~!」と母が驚きの声を上げる。


 一番驚きたいのはきっと白玉なはずなのにひどい話である。


「…!」(汗) 



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 次の日


 「さて」と一言つぶやいてから誰もいないリビングで「使い魔入門)」を開き、読み進めていく。


『優れた術者は、使い魔の能力が使えるようになる。だがこれにはある程度の信頼が必要であり、そのうえ自分ができなかったことへの慣れや、能力のコントロールなどやることが増えてしまい、自分自身の鍛錬がおろそかになりがちになるので注意すること』


「ほーん、使い魔の能力が使えるようになんのか。すげーじゃん」と考えながら「うん?」と何かが引っ掛かる。


「使い魔の能力……アレ?能力…?能力とな?」とぶつぶつ呟くバカが一人。


「!!!!!!!」


 優人の脳内に電流走る!


「こいつ!!!!!!!ただの!!!!!!!!うさぎさんじゃねぇか!!!!!!!」


「!」ビク!


 そうなのだ、この白い毛並みのウサギは魔物でも幻獣でもなくただのウサギ目ウサギ科ノウサギ属に分類されるただ普通の野生のウサギである。


「どどどどどないせーちゅうねん!」


 彼の人生で二度目の嵐が吹き荒れていた!


 どうする優人!負けるな優人!滑稽だぞ優人!


 そんな一人あたふたしている哀れで愚かなご主人を眺めながら、白玉も一緒になってあたふたしていた。


 白玉の、そして優人の受難はまだ始まったばかり。

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