喫茶ゆりかごの愛するこどもたち

@tiptack6677

青い世界で愛を誓う

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 連日の猛暑にへたりながら俺は朝食を取る。テレビの朝の情報番組の特集は夏休みのおすすめスポットだ。エンタメは夏に公開されたアニメ映画について。どのテレビも夏の話題ばかりだ。妹にぼーっとしちゃだめと叱られつつ、俺はなんとかして眠気と戦いながらデザートのキウイを食べ終えた。

 春夏秋冬、どの季節もその季節にしかないものがあるし、特別な風景がある。どの季節が好きかと尋ねると人によって好みは別れる。俺は特に好きな季節を考えたことはない。どの季節も好きだ。特別に一つだけ選べと言われたら困る。どの季節も好きだけどいいことも悪いことも兼ね備えているから一番を選べない。もし聞かれたら俺はこう、答えるだろう。夏と。

 夏は特別な季節だ。2ヶ月の休みがもらえる夏休みがあるから。学生にとって長い休みと言えば夏休みだろう。小学生や中学生の頃は確かに夏休みが長い。高校生の頃は夏休みがあまりなかったような気がする。文化祭の準備で短かったと思う。大学生になれば結構長いのだろう。冬も冬で長い。俺は大学に通わずに家の喫茶店を継いでしまったので詳しいことはわからないが、進学した同級生曰く大学生の夏と冬は長いらしい。長い休みでしか経験できないものがこの世にはある。その休みがもらえるのは夏、プールや虫取りなど思い出をたくさん作れるのは夏。そう、夏は特別だ。世間一般に対する夏の思いはこんなものだろう。建前はこれぐらいにして今度は俺の本音を語るとする。

 俺にとって夏は特別だ。俺の運命が変わったのも、俺が運命を悟ったのも夏だ。

 

 まずは俺の運命が変わった夏について語ろう。あれは小学生の頃、生まれてから9年経ったときのこと。俺は家族旅行で静かな森と湖があるホテルに行った。避暑地として有名なところであり毎年旅行に行くとしたらここって決めていた。年に一度の頻度でここに訪れているものだから気分は実家に帰省しているものだ。毎年も通えばホテルの支配人たちとも顔なじみになって互いに再会を喜ぶ仲となっていった。他人が味わうことないだろう、特別な客として俺たちはホテルに泊まっていた。あの時の俺はこれが最後の宿泊になるとは思わなかった。

 いつものように遊んだり、湖に行ってボートに乗ったり、そして宿題したりして過ごしたある日のこと。日中の遊びの疲れで俺はぐっすりと寝ていたが、突如鳴り響いた非常ベルの音ですぐに目が覚めた。けたたましく鳴り響くベル、今まで泊まった中で聞いたことがない。何があったのだろうと目覚めた俺は夏の暑さとは違う熱さ、そして隅から隅まで漂う煙ですぐに把握する。よくないことが起きたと。両親に連れられて着の身着のままで廊下に出る。少し足早に移動しながら俺たちは非常口へと急ぐ。たくさんの人に押されながら外に出て俺は握っている手に違和感を感じた。何となく思った、両親とは違う手だと。見上げると両親とは違う人が俺の手を握っていた。俺の母親と歳は同じくらいだが、見た目は正反対の活発な人。ポニーテールで背はしゅっとしている。体格がしっかりとしている。俺の視線に気づいたその人は声をかけてきた。


 「大丈夫かい。少年よ」

 「あ、はい」

 それが今の母親との出会いだ。比奈岡 朱美、表はとある喫茶店のオーナー兼占い師、裏では魔法使い。俺は色々あって比奈岡 朱美の元にいることになった。大人の事情ということで俺は生まれ育ったトーキョーからギフにいることになった。何があったのかはわからないが、俺が理解できる歳になったら教えてあげるということなので待つことにした。比奈岡 朱美の元にいるようになってから学校の手続きなど複雑なことはどうやったのかは比奈岡 朱美や俺の両親が亡くなったので詳しいことはわからない。まあ、あの人や大人たちのようにどうにかやったんだろう。そんなつじつま合わせがあいまいなまま、俺はその日から1年経った夏を迎えた。

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