理性を保てる環境。

「命に代えても君を守る」

 なんて口説き文句がありますね。

 結構なことです。格好いい言葉です。

 でも実際命に関わる事態になったとき、それを実行することが果たして出来るのか。


 人間は、理性があるから人間で居られるのだと思います。

 理性が吹っ飛ぶような事態に立ち会ったとき、さて一番に働くのは本能だ。そんなときでも、誰か他人を守れるのか。

 理性のある平常時はつよくそう思っていても、実際そのような緊急事態になってみないとわからないと思います。


 理性のない状態って、すごく残酷な状態だと思います。思いやりも何もない、自分のことしか考えられない。他人のことを考えるなんて、そんな余裕はない。個人が個人であることに依る悲劇ですね。これは一種の呪いだと私は考えています。きちんと満たされるときには祝福になり得るのですが。


 私はたまに、「日本はいい国だし、今の時代はいい時代だ」と言いますが、それはこの理由に依ります。

 現代日本は、すくなくとも人間としての理性を保てる環境だから。

 そんなの当たり前、それが文明の最低基準、と思われるかも知れません。しかしこれは「当たり前」でないと思います。非常事態は過去にいくらでも起こっています。人間が理性を失うような非常事態が。そしてそういったことが日常茶飯事だった生活は、確かにありましたし今もあります。人間が理性を保てない時代、理性を保てない環境。

 これはとても、悲惨なことだと思います。

 理性を保てる環境、これがいかに大切でいかに重要でいかに必要か、身に染みるように感じています。理性が発揮出来なくっちゃ、人間の甲斐がないじゃないか。



 余談です。

 理性を失ってなお守りたい人がいる人は、強烈に幸福だなと思いました。本能の中でなお守りたい人。陳腐ですが、それは本当に運命の人なのでしょう。



 ところで、家の本棚が崩壊したせいであろうことか『内的体験』を失くしてしまいました。何たる失敗……。早く探し出します。

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