第102話 特定条件下でのみのチョロイン

 まだ正式にはサリアと恋仲にはなってないようだが、ダイゴローとサリアの仲は良い。

 お互いチラチラ見ながら様子を伺っているし、食事も自由席なのに必ず隣に座っている。


「サリア、ダイゴローとはもうつがいになったのですか?」

『ブッ!』


 ラケルの唐突な発言にサリアもダイゴローもパエリアを吹き出しかけ、無理矢理飲み込んで喉を詰まらせている。

 慌てて互いの背中を叩きながら、空いた手でコップを掴んで水を飲み干した。


「っ、はーはーはー……あーっ、死ぬかと思った」

「僕もです……」

「心臓が止まれば物質操作で動かしてから、神薬をかけて蘇生してあげますよ」


「って、そーじゃねえだろ。だいたいなぁ、アタシはアタシより強い雄に組み伏せられて無理矢理迫られるけど、それでも無理矢理じゃなくて同意を引き出されるのが……って、何言わせんだよ!!」


(えええええええええっ!! サリアって隠れ乙女だったのぉぉぉーーー!?)

(あらあら、サリアちゃん。乙女ねぇ〜)

(乙女かよ!? いつものオラオラ系女子は憧れの現れだっのか?)

(なるほど、これが乙女というやつですか)

(僕、君に認めて貰うように頑張るよ)


 驚愕、優しさ、疑問、納得、決意。

 それぞれの瞳に見つめられたサリアは。


「っつーーー! 残りは部屋で食うからな!」


 羞恥に負け、食器を持って自宅へと逃げた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「えーでは、これより。なし崩しで新たな仲間になったダイゴローを、どうやってサリアの彼氏や夫にするかの相談を始めたいと思います。個人的にはサリアが誰かとくっつくのは非常に喜ばしい事なので、ダイゴローには積極的に強気に、サリアを口説いて貰いた」

「ゼノさん、長いです」

「あっはい、すみません。では皆さん、意見をどうぞ」


 仲間の若い娘さんがくっつく、自分の保護責任が終わる。

 その事実にゼノは興奮して挨拶に臨んだが、見事にミラにぶった切られた。

 今はしょんぼりして、イスの上で膝を抱えて座っている。

 ダイゴローだけはゼノの落ち込みを気にして、他のメンバーに視線で問いかけているが、全員首を横に振って放置するように伝えている。


「はいっ! ここは鉄板の壁ドン耳元ささやき頬撫で顎クイキッスの流れで一撃ノックアウトだと思います」

「あの、僕の身長が彼女の肩くらいまでしかないので、頑張って大人のマネをしている子供にしか見えないんじゃないかと」


「だったら私が特訓して、ダイゴローちゃんを強くしてあげますよー。強くなってサリアちゃんを壁際に追い詰めたら、足払いで座らせてから壁ドンすればいいんじゃないかなー?」

「流石です、ジュディスさん。頼りになりますね! ゼノさんやラケルさんは、どう思いますか?」


「ああ、うん。いいんじゃないかな。恋愛経験ゼロの俺じゃ、いい意見なんて出せそうにないからね」

「私は恋愛感情自体ないので、観察させてもらうだけです」


「じゃあ決まりですね。明日からダイゴロー君は、サリアの運転中にジュディスさんとの特訓です」

「はい、わかりました。ジュディスさん、よろしくお願いします」

「はーい、私に任せてくださいねー」


 こうして、ダイゴロー・サリア、アベック計画は騒がしく進行し始めた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 その頃、サリアの使用している家では。


「ダイゴローの野郎。闘ってみたけど、まだ底が見えねえ。アタシは巨漢が好みだと思ってたのに、ガキみたいな見た目なのに心臓がドキドキしやがる。それに……」


 深夜になり冷えたパエリアに気付くまで、ブツブツとつぶやき続けていた。

 もう何もしなくても9割方決着がついてい見えるのは、誰の目にも明らかだった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 前話からの補足

 ダイゴローは初恋に心と体のバランスが乱れ、男として精神的にも成長しようとしているので、本来の丁寧な言葉づかいから男らしく見せようと無意識で荒い言葉を使おうとして失敗しているので、喋りが安定していない。

 読者の混乱を防ぐために、補足としてここに記載。

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