第92話 夜に曝け出された本性

 騎士団長の挨拶の後、司会の執事長により閉式が宣言された。

 あとは1人に神薬と万能薬を各1本、お土産として渡された。

 ゼノ達とフレデリック夫婦は、ホストとして最後まで見送った。


 残った料理は希望した参加者やスタッフが持ち帰り。

 捨てざるを得ない落下した物や食べ残しについては、ゼノが亜空間へと吸収して処分した。

 これまで吸収してきて大半の物は現在。芝生や畑の土の栄養素として、亜空間下部から少しずつ排出されている。



 テーブルやイスの運搬は、ゼノが浮かべて入口まで運んだので。

 スタッフのほとんどの作業は、亜空間から出して倉庫等へ片付ける事だった。

 来賓が辞してから1時間足らずの、超高速作業となった。

 スタッフの料理回収の時間が大半だった。


「ゼノ。本当に君は何でもありなんだね」


「そうでもないさ。俺はこの中でだけ、ちょっと有能になる。その程度さ」


 それよりと、ゼノは続ける。


「前々から言っている通り、城も完成したからこの国を出る。世界樹に呼ばれているから寄っていくが。内容次第では、即日旅立つ予定だ」


 フレデリックは少しかげりのある笑みを浮かべ、残念そうにしている。


「とても残念だよ。出来れば君には、ずっとこの国に住んで欲しかったんだけどね」


「いずれまた、帰ってくるさ。ヒト嫌いなんでな。ヒト中心の街や国に住むつもりはない。ただこれだけの能力があるのに、引きこもって腐らせるのを。ほんの少し、惜しいと思える様になっただけさ」


「そうか、決意は硬いんだね」


「あっ、いや。硬いかと言われると、そーでもなくてだな?ここだけの話し、あいつ等の結婚相手でも見つかれば。さっさと寿退職する可能性が出てくる。そうなればさっさと戻ってきて、7色草とか虹色草を売って暮せばいいなと思ってんだよ」


 ゼノはフレデリックの近くに顔を寄せて小声で話したが、耳の良い彼の妻達とジュディスには聞かれていた。


「あいつ等全員、年頃の娘さんだろ?いつまでも収入不安定な仕事ばかりさせてないで。いい男が居れば、喜んで背中を押すつもりなんだよ」


「えっ?ゼノ。君は結婚するつもりはないのかい?もったいない」


「俺?俺はいいんだよ。自己分析でしかないが。俺の性格や人間性で一緒に居られるのは、仲間までだと思ってるからな。結婚には不向きな人間性と考え方してると思うよ?かなり」


(そうかなー?僕はそんな事ないと思うんだけどな。でも仕方ない。こういった事は言葉で伝えても、相手には中々届きにくいものだし。旅の中で彼が成長して、自己評価を上げてくれる事を願うしかないかな)


「まあ、この話しはここまでにしておこう。こういった話しは、大体が平行線のまま終わらないからね」


「まっ、そうだな」


「ゼノ、今日はありがとう。おかげでかなり、今後の統制が楽になりそうだよ」


 そう言い残してフレデリックは、別室で談笑していた妻達と共に。小城から去っていった。


 その晩。

 日中食べすぎたから夕食を辞退したゼノ。

 使用人用の部屋でもまだ豪華で広いと言いながら、豪華すぎて広すぎる自室には戻らずに使用人部屋で眠ったのは。チームの誰も、知る由もなかった。


(あー。まだ、こっちの部屋の方が落ち着くわー)

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