第62話 4日目

 この日は生活魔法の亜空間で虹色草の増産中なので、世界樹の解呪作業は一時中断。

 亜空間内部で7色草の進化は出来なかったが、進化した虹色草の栽培増産なら可能だった。


 そしてジュディスは夜明け前に呼び出され、エルフの国シュトロハーゲンからではなく。

 世界樹から直々に、ゼノと行動を共にするようにとの言葉が賜われた。

 ジュディスは世界樹から直接声をかけられ、大泣きして喜んでいた。


 そして夜明けから、ゼノ達が宿泊するとホテルへとやってきて。

 世界樹の解呪状況を確認して深夜まで起きていたゼノを、喜びの連続ノックで起こし。

 今はやんわりと遠回しに静かにしていてと言われ、応接室で待たされて落ち込んでいる。


(世界樹に声をかけられて嬉しかったんだろうな。だが流石に、睡眠3時間で起こされるのは辛い)




 睡魔に勝てずに二度寝して。

 目覚めた時間を確認したら、既に13時を回っていた。

 寝室、リビング、応接室と3部屋セットで個室という、ゼノには訳の分からない世界の超高級ホテル。

 ジュディスを待たせている応接室に向かうと、彼女もソファーで横になって眠っていた。

 部屋を出てミラとサリアの状況を確認に行く。

 廊下の向かいの部屋のドアをノック。


「俺だ、ゼノだ。起きているか?」


 今日はちょっと気分が良いので、言葉使いがキリっとしているつもり。

 救国の雄なので、かなり周囲の目も気にしてこうなっている。

 更に自室の右隣でも返事がない。


(2人とも留守か)


 自室に戻り内線でルームサービスの昼食を、2人分頼むとジュディスの肩を揺すった。


「ジュディス、起きてくれ。ルームサービスを頼んだから、昼食にしよう」

「お昼ご飯ですかー?おきまふー」



 リビングに移動して待っていると、ノックの後にメイド2人がワゴンを押して入ってきた。


「はい、どうぞ」

「失礼いたします」


 メイド達は手早く配膳すると、2人揃って壁際に立って待つ姿勢に移った。

 人間そう簡単に変わるはずもなく。

 現在も小市民小物ハート搭載のゼノは、合図ひとつで誰かが従う状況に緊張し始めた。


 対するジュディスはというと。

 元騎士だからなのか、数年介護されて生きてきたからなのか。

 側にメイドが控えていても平然として、ゼノの食事の合図を待っている。

 それに気付いたゼノは一瞬で誤魔化しの言葉を考えつき、何食わぬ顔で話し始めた。


「すまない。俺は先日までは平民でしかなくて、こんな豪華な料理には縁がなくてね。つい見惚れて感動してしまったよ。それじゃあ、頂こうか」


「世界樹様と精霊の恵みに感謝を」


 ジュディスもエルフ式の食前の祈りを捧げ終えたので、ゼノもナイフとフォークを手にする。

 本格的な会食ではないので、音を建てない程度のマナーを守り。

 ゆっくりと味わって、ひとつひとつ丁寧に頂いていく。


 異国の食文化あるあるの、そんなの食べるの!?

 といった食材もなく、奇抜な味付けもなく。

 簡単な料理のはずなのに、気が付けば皿は空になっていた。



 食後の紅茶まで飲み終え、カップを下げるメイドに料理も紅茶もとても美味かったと告げる。

 メイドは言葉少なく一礼をすると、ワゴンを押して去っていった。

 その時閉めたドアは、僅かも音を立てなかった。


 ゼノは完璧メイドに感心しながらも、食後はどうしようかと考える。

 窓から見上げた空は、とても青かった。





(^O^)/あとがき

 55話で4万3000PVを超えました。

 また、ランキングでも9月3日現在で。

 総合週間61位

 総合月間100位

 異世界ファンタジー週間37位

 異世界ファンタジー月間64位

 と全て、ジャンル別100位以内に入る事が出来ました

 読んでくださった皆さん、ありがとうございます。

 今後とも、生活魔法をよろしくお願いします。

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