第36話 7日目

 バイク屋を巡り車屋でパンフレットを回収して、亜空間に車庫を作っていたら昨日は終わっていた。

 7色草は今日も瑞々しく生い茂り、昨夜より茎と葉を増やしていた。


 居間に増えたスペースで調理をしながら、つい出来心で7色草の葉を1枚。亜空間に吸収させてみた。


「がっ、ああああああああああ!!」


 突如、ゼノの全身を爆発しそうなエネルギーの奔流が駆け巡り。

 あまりの痛みに泣き叫び、のた打ち回った。


「ゼノさん!どうしたんですか!?」

「ゼノ!何があった!?」


 着替えの途中だったミラとサリアが駆けつけるも。既にゼノは気絶しており、原因不明のまま慎重にベッドに運ぶしか出来なかった。


「ゼノの奴、一体どうなっちまったんだ」


 自分のベッドに座り、白しか見えない空間の隔たり……壁に持たれようとしたサリアは。そのまま後ろに倒れ、ベッドから落ちた。


「うおっ!……いってー、何だよこれ。部屋、広がってねえか?」


 慌ててミラが枕元の先に手を伸ばすも、5メートル以上も歩いて漸く壁に触れられた。


「多分だけど。ゼノさんと生活魔法が一気に強化されたから、その痛みで気絶したんだと思う。だからここまで劇的に部屋が広くなったんじゃないかな」


 ミラは普段ゼノの話をする時とは違い、年も近い友となった相手にだけ使う口調で話す。


「原因はやっぱアレか?」

「うん、アレしかないと思う」


 2人の視線は衝立で遮られているが、その視線は7色草に向けられていた。



「今1番の問題は、ゼノさんしか入口を開けられないって事。食料が尽きる前に目覚めて貰わないと、全員餓死なんて未来までありえるから」


「いや、その心配は必要ないよ」


「この頼りない声は!」

「ゼノさん!」


 2人が慌てて居間に出ると、衝立の奥から凄まじい風格を纏ったゼノが現れた。

 外見は変わらずもやしを脱したばかりのおっさんだったが。黄金の後光を背負い立ち、凄まじいオーラを放っていた。


 ミラはその、あまりの風格の違いに固まったが。

 サリアは気にしつつも、ゼノを変わらずに仲間として扱った。


「オメー、心配させやがって」


 そう言って強く、背中を叩いた。


「はべしっ!!」


 サリアもあの後光には気圧されていたのだろう。

 いつもより手加減が出来ておらず。ゼノはテーブルを巻き添えにして、食器棚へとダイブさせられた。

 そしてその後光も風格も消え失せ、いつものダメなタイプのおっさんだけが残った。

 今度は辛うじて、気絶だけはしていなかった。


「ぐぬおおおおおおー!!」


 痛みで悶絶はしているが。




 ゼノは床に正座させられて、ミラとサリアはイスに腰掛けて容疑者……いや、犯人を見下ろしている。


「ゼノさん。貴方は今朝、新しく出来たキッチンスペースで朝食を作っていましたね?一体その時、何をしましたか?7色草を吸収したりしませんでしたか?」


「こっちとら全部分かってんだよ、素直に吐いた方が見の為だせ?」


「はい、その通りです。他の素材みたいに吸収したら亜空間が広がるかなって。つい出来心でやってしまいました。申し訳ありませんでしたー!!」


 言い終わるとゼノは綺麗な土下座へと体制を移行させ、ジワジワ怒る仲間へと全力で謝罪した。


「サリアが1日かけて素材を集めても、1センチにもならなかったのに。5メートルも広がる程の強化ですよ?下手したら死んじゃってたんですから、2度と勝手に高級そうな素材を吸収したりしないで下さい。い・い・で・す・ね!?」


「はっ、はいぃぃぃ。勿論です!」


 10以上も年の離れた少女への、見事な平身低頭っぷり。

 例え神々しい後光や風格を得ても、おっさんには借り物にしかならなかった様だ。

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