第34話 6日目 2

 昼食のステーキ店の店員に近くにバイク屋が無いか聞いてみた。

 割と近い位置にあったが、行き過ぎていたので戻って探す。


 見つけたバイク屋には内外に多数のバイクが展示されていて、どれも速そうでゼノには区別がつかなかった。

 牽引や2種以外は特別な免許が不要なので、大型バイクならゼノも乗れる。

 扱う技術や体躯があるかは別として。

 結果。大型を買えばサリアがメインで乗り、中型ならゼノメインとなった。


 ゼノは能力的に、ミラは収納スペース的に中型の購入を希望。

 サリアは自分が乗るのに楽しいからと大型を希望。

 ミラとサリアで静かな牽制が行われ始めた。


(収納スペースかあー)


 ゼノはポケット経由で亜空間に手を突っ込み、スペースの拡大が出来ないか探っていた。


(あー…これはひょっとして、いける?)


 元々生活魔法の亜空間は一辺10メートルで、1000立方メートルある。

 つまり上部には、無駄にしている空間がかなりある。

 今回ゼノはそれに気付いたので、亜空間内部の形を変更出来ないかと試してみた。


(うーん。高さ2メートルじゃ、手を伸ばしたら天井にぶつかるしな。余裕を持って3メートルにしとくか。そうすると生活空間が、ざっと3倍ちょいくらいにはなるのか)


 合計1000立方メートルと、これまで増えた誤差少々なのは変わらないが。

 高さが圧倒的に減ったので、入口から見て左右と奥行きがかなり増えた。


(これなら、空間の設定と荷物の配置次第では、車まで収納出来るかも?)


 車まで買えるなら、自分に対する移動の負担が激減する。

 ゼノは相手の説得に頑張る2人を呼ぶと、店を後にした。


「2人共予定の時間だ、パンフ貰ったら今日はもう帰るぞ」


 予定にないゼノの行動であったが、ミラ達は素直に従いパンフレットを手に店を出た。


「2人共、何故かと聞きたいだろうが。部屋に帰ってから話すよ」


 ゼノに先を制されて、何も言わずに適当な裏路地から亜空間へと入った。



「焦らすつもりはないから答えを言うけど。この亜空間の使える範囲の拡張に成功しました」

『えっ?ええええええええええ!?』


 ゼノは2人に高さと体積の話をして、使える空間の確保に成功したと説明した。


「なるほど、高さですか。それは盲点でした」


 感心するミラと褒められている気分のゼノを放っておいて。

 サリアは壁扱いの空間に手を当てて、亜空間の広さの確認をしていた。

 サリアは1周してくるとひどく興奮してはしゃいでいる。


「すっげーよ!これなら入口を車庫にしても、今まで以上に部屋の広さがあるぜ!」


「どうだ?これならワゴンでも買えば移動がかなり楽になるだろう?バイクを買う前に気付いて良かったよな?」


(最初の買い物の時に気付いていてくれたら、もっと楽な生活も出来ていたんですけどね。言わぬが花ですか)


 ミラは空気が読める少女なので、余計な発言はせずに静かにため息をついた。

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