第32話 5日目 3

 ゼノがギルドへ到着すると、いつもの男性職員に会話目的の個室に案内された。


「チームの他の皆様はこちらでお待ちです」


 職員に礼を言ってからドアをノックする。

 返事があったので中に入ると、チームの3人と見知らぬ青年がイスに座っていた。

 ミラがユニに説教しているので、サリアに状況を聞く。


 2人で駅周辺を聞き込みしつつ探し回った結果、4時頃にユニらしき人物の行方が判明。

 なんとホテル街へ、長身イケメンと共に向かったそうだ。

 ホテル街への移動はミラが拒否した為、アーケードの見えるファーストフード店で見張っていた。

 遅い昼食を完食してからもかなり待っていたら、遠目にユニを見つけたとミラが言うので移動した。


 アーケードから外に出た瞬間にユニとイケメンは、サリアに背後を取られ連行。

 変な噂が立たない様に裏路地でミラに詰問された。

 ユニの証言では列車が運休しているなら、ナンパして来ても良いよねと思いその場を離脱。

 理想にほど近いイケメンを見つけたので、言葉巧みに休憩ホテルへ移動。

 その後2人は恋人になって出て来た所を、ミラ達に捕獲された。

 そしてユニは、彼が出来たからチームを抜けたいと言い出し。

 それを聞いたミラが怒り心頭でユニ達をギルドへと連行した。

 そして今に至る、と。

 伝言板へ書き置きを残す辺り、理性的にキレているみたいだ。


 ゼノはイケメンを観察してみるが、確かにハイスペック過ぎる。

 イスから伸びた足と座高から、身長は180を超えるだろう。

 金髪碧眼の草食系の甘いマスクで華奢に見えるが、肩から首への筋肉を見るとそこそこ鍛えている。

 白のワイシャツと紺色のスラックスに革靴。

 少し前の自分と近しい衣装なのに、天と地程の差を感じる着こなし。

 そんな完璧イケメンが何をトチ狂ったのか、選んだのはユニだったと。


(別段ギルドにチーム登録申請なんてしてないから、ユニが抜けても問題ないんだよなー)


 ゼノはユニをチームから除名すると決め。テーブルの下でミラに見えない様に、イケメンと指を絡めているユニに冷たく告げる。


「ミラ、そこまでで良い。ユニはチームから除名する。理由は取った行動の余りにも身勝手加減だ。命を預ける仲間として、そんな人物は絶対に認められない。ミラ、サリア。2人共、行こう」


 3人が部屋から出ると廊下には誰も居なかったので、亜空間へと入りユニが追跡してきた場合の対処として隠れる。

 案の定除名を告げられて驚いた、それも取り返しのつかない事をしてしまったと気付いたユニ。

 待ってと叫んで個室から出るが、ギルドのロビーまで誰も居らずに来た。


「今ここに、ゼノさん、ミラちゃん、サリアさんが来ませんだしたか!?」


 大声をして聞いてみても、誰も見ていないと言う。

 彼等に演技の才能があるなら、こんな所で万屋なんてしていないだろう。

 ユニは個室に残してきた恋人を思い出し、来た道を戻ると。

 個室のドアの前に、ゼノに預けた荷物が一纏めにして置いたあった。

 荷物に抱きつき、ユニは大泣きした。

 この日を境に、ギルドで彼を見た者は居なかった。

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