『53』
翌朝、目覚めた麗音の横には小さく丸まったリリアルの姿。まだ眠っているリリアルを起こさないようにベッドから出た麗音は、殆ど丸見えな透け透けパジャマを脱ぎ捨て、いつもの黒いワンピースに袖を通した。
髪は寝癖で凄い事に。リリアルではないが、見事にメデュっている。そんな麗音が姿見鏡に映った自分に向かって苦笑いをしていると、ドアをノックする音が部屋に響いた。それと同時に麗音を呼ぶ声。
シルクが起こしに来てくれたようだ。
「朝ですよ〜レオン〜? コンコン」
「は〜い、今起きたよ」
「入りますね〜」
そう言って部屋に入って来たシルクは、ベッドに眠る白メデューサを見るや否や、浮遊形態に移行して部屋中を慌ただしく飛び始める。
「な、な、なんて事ですかっ!? わ、わたくしという者があると言うのにっ!? ま、まさかレオン……ロリコンですかっ!? アタフタ、アタフタ、ガヤガヤ!」
「はぁ……これには事情があるの〜……」
麗音は事の経緯を簡単に説明する。
息を荒げていた幽霊は、やっとの事で落ち着きを取り戻し地に足をつけた。シルクが騒いだ事で目が覚めてしまったリリアルは、麗音と同じく見事な寝癖である。元々クセの強いリリアルの髪がクルンと跳ねたのを見てシルクは小さく微笑む。
「おほん、おはようございます。二人とも、とりあえず寝癖をなおしましょうか。順番に鏡の前へどうぞ。女の子なんですから、身嗜みはキチンとしておかないとですよ?」
シルクは麗音、リリアルの爆発ヘアーを瞬く間にセットしていく。麗音はいつものお団子、リリアルの髪も綺麗にとかしてあげる。
そう言えば、シルクはいつも見事な三つ編みだが、いったい何時に起きているのだろうか?
それはさておき、麗音はリリアルとガウルの事をシルクにも相談する事にした。
簡単に説明すると、シルクは細い顎に手を添え少し考えた後、二人に言った。
「わたくしとしては、素直に謝るのが一番かと思いますが……」
「でもね、ケンカした時って謝るのむずかしいよね。言い出すタイミングとか」
麗音の言葉にシルクは首を捻り考える。プカプカと浮遊しながら考える事数秒、思い付いたかのように手を叩き提案する。
「それなら、他の皆んなにも聞いてみてはいかがです? 色々な意見が聞けるかも知れませんよ?」
「それがいいかもね。あ、でも……」
「サイにぃにはバレたくないでしゅ……」
リリアルは頭の白蛇を萎びかせ、消えそうな声で言った。
すると、シルクが笑顔でリリアルの頭を撫でた。
「サイはうるさいですからね〜。わかりました、このシルクにお任せください。サイには森の食材キノコの採取と、川で魚を釣って来てもらいましょう。それなら夕方までは帰って来ないでしょうし」
「あ、ありがとでしゅ〜、しゆく〜」
サイを追い出すのは、同年代のシルクに任せる事に。その間に麗音とリリアルは皆の意見を聞く。何かいい謝り方があれば良いのだが。
「よーし、朝ごはん食べてから、まずはスフレに聞きに行こう? スフレならいいアドバイスをくれるよきっと!」
「でっしゅ〜!」
——
「のじゃ? 仲直りをしたいが、謝り方がわからないじゃと?」
スフレは大きな緋色の瞳を瞬かせる。
「何かいい方法ないかな〜?」
「オヤツの取り合いじゃろ? そんなもの、弱肉強食でいいのじゃ! リリアル、お前は強い魔物になれるぞ、胸を張るのじゃ」
謝り方から完全に逸れたスフレの言葉に戸惑うリリアルは麗音に振り返り言った。
「やっぱり、しゅふれじゃダメDeathね」
「そうだね〜。ありがと〜スフレ! もういいよ〜!」
麗音は強烈な笑顔でスフレに戦力外通告を告げ、リリアルを連れて庭の花壇を目指す。
セイレーヌに相談を持ちかける為だ。
「レーヌならきっといいアドバイスをくれるね」
「でっしゅーー!!」
——
魔界とは思えないくらいの爽やかな風が二人の身体をすり抜ける。もはや魔王城の庭、亡者の庭園はお花畑である。とても良い香りがする。
それにしても、いつの間にここまで咲いたのか。やはりセイレーヌの魔歌が効いているのだろうか?
『ブルラァ〜クションッ!!』
「セイレーヌ姉いないでしゅね」
「そうだね。もしかしたら噴水の方かも! いつも噴水広場で歌ってるし、行ってみよう?」
『ブルラァ〜クシャワォン!!』
「まおーしゃま? このお花は何ていう名前でしゅか?」
「えっと〜……あれ? 何だっけ?」
二人はクシャミで存在をアピールしていた
『ケルヴェロスだらっクシュンッ!?』
麗音の手をしっかり握り小さな歩幅で一生懸命について行くリリアルは、どことなく楽しそうだ。
これだけ
そして間もなく二人は噴水広場へ到着。それと同時に目的のセイレーヌも発見する事が出来た。
しかし、
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