第230話 タリスマンの付与
次にロブと会う場所はロブが探してくれることになって、私たちは帰宅した。
今日はクランにではなく、寮のほうだ。
タリスマンにモカと私で新たな付与を付け、ソルちゃんに運んでもらうためだ。
モリーはソルちゃんに私のつくる晩御飯もとても美味しいと言ったようだ。
それでソルちゃんはクライン様におねだりしたそうだ。
(ソル、エリーのごはんたべたい~!)
「それほど美味ならば我々も食してみたいものだ」
クライン様がそう仰られたので、私はクライン様とダイナー様をお茶会に招待することになった。
食事つきのちょっと豪勢なやつだ。
でもソルちゃんを貸していただくためだ。
このぐらい我慢しよう。
モリーとソルちゃんを私の部屋に連れてきて、ドラゴ君とミランダに預ける。
私とモカはお祈りだ。
スウィフトさんのところで買った聖水で作業台の上を清めて、真新しい白の麻布の上に
モカは自分の意思をのせられるように、私はレオンハルト様のお兄様の無事と快癒を祈った。
私には聖属性はないけれど、気持ちをのせると少しは付与に作用するのだ。
すると祈りの力に気が付いたソルちゃんが私たちのところまで飛んできた。
(エリー、なにしてるのー?)
「知り合いのご家族が病気なの。だから病気快癒を祈っているのよ」
(なぁんだ、ソルもする~。モリーもいっしょにしよー)
ソルちゃんはモリーを嘴に挟んで、タリスマンの上に乗せた。
すぐ上空を羽ばたきながらタイミングを合わせる。
(せ~の)
すると、ソルちゃんとモリーが同時に輝いた。
眩しいけれど、目が痛くない不思議な光。
優しく包み込むような癒しの光だ。
タリスマンどころか、私たちも私の部屋も全部浄化されてしまった。
別に汚れてはいなかったのだけど、私の部屋が荘厳に見える。
ソルちゃん、すごすぎです。
(エリー、できたよー。ほめてー)
「うん、ソルちゃんはすごいね! 素晴らしいわ。モリーも頑張ったね。
二匹ともどうもありがとう」
ソルちゃんだけでなく、モリーもえへんと胸を張っている気がする。
ウチのみんな+ソルちゃんは本当にとってもいい子です。
シーラちゃんも、他の従魔のみんなもいい子ばかりで、人間との差が大きすぎる。
みんなが愛おしいです。
さて、問題のタリスマンを見てみた。
あ、あれ?
何コレ、ちょっと待って?
鑑定したら、神具になってるけど~~~⁈
しかも、しかも、持ち主エリーになってる。
何で?
えっ、ソルちゃん聖獣だよね。まだ神様じゃないよね?
まさかモリーが?
えっ、でもドラゴ君が弱いアンデッドくらいって。
「ねぇ、ドラゴ君」
「何? エリー」
「モリーって、弱いアンデッド倒せるくらいの聖属性なんだよね?
ゾンビをちょっと倒せるくらい」
「もうちょっと強くても倒せるよ」
「ドラゴ君にとって弱くないアンデッドってどのくらい?」
「ビアンカぐらい」
ビアンカさんは鑑定したことないけど、そんなのしなくてもわかるよ。
計り知れない力の持ち主だ。
「この間のエンペラーリッチがどんなものか実際見てないからわからないけど、普通のリッチなら全然倒せるよ。モリーはまぁまぁ強いと思うよ」
な、なんですと~!
「良かったね、エリー。モリーがいたらいろいろ大丈夫だよ」
そうにっこりと笑うドラゴ君の笑顔が眩しかった。
「も、モリーって神獣じゃないよね?」
「違うと思うよ。ソレイユとの相乗効果なんじゃないかな?」
それにしたってすごすぎです。
これは出所を絶対に知られたらダメだ。
「あたし、もしかして出番なさそう?」
モカがこそっと私にささやいてくる。
「いや、呪いだもの。予備の手段としてモカも手伝って」
「わかった。レオンが傷つくのもヤだもんね」
出所を知られないためにどうしたらいいか悩んだが、教会からだと思ってもらいたいのだから隠蔽なんか出来ない。
それに私ごときの力など、すぐに解除される。
みんなに相談すると、
「うーん、今ウィル様に聞いてみるね」
あっ、ドラゴ君。
マスター、ごめんなさい。お忙しいのにお邪魔して。
するとドラゴ君の手から、パッと光があふれた。
聖属性だ。
「ドラゴ君、今の……」
「ウィル様の力だよ。ウィル様は聖属性が一番強いんだ」
マスター、ありがとうございます。
再度鑑定してみると「神具 持ち主エリー」はなくなって、ただの聖属性のタリスマンとなっていた。
マスターってホントに万能すぎます!
ああ、でもダメ。
この間頼らないで、自分の足で立とうって思ったところなのに。
自分の意思の薄弱さにちょっと落ち込みます。
イヤイヤ、今はレオンハルト様のことだ。
とにかく私たちはこれをレオンハルト様の元に届けて、お兄様への呪いを跳ね返すのだ。
そしてお兄様の奥様の件は、私たちでは何もしないことにした。
呪いが明るみに出れば、きっと周りでそのことを調べるだろう。
普通なら捕まるけど、暗殺ギルド絡みだから捕まらないかもしれない。
それでも奥様は警戒すると思う。
だからしばらくは再度呪ったり、殺しを依頼したりしなくなるだろう。
甘いかもしれないけど、事件を解決することが私たちの目的ではなくて、レオンハルト様の魂が救われることが重要なのだ。
あの方が神の
それで、レオンハルト様に渡す方法をソルちゃんに相談した。
(いいよ~。リカにないしょね~)
よろしくお願いします。
ヴェルシア様、どうか私たちの計画が成功して、レオンハルト様とお兄様をお救い出来ますように。
◇
次の闇の日、朝ご飯を食べたソルちゃんが早速レオンハルト様のところへ行ってくれた。
ソルちゃんはレオンハルト様と何度もお話したことがあるので、魔力で探せるんだって。
モリー、あなたの人、いえ鳥選は素晴らしいよ。
でもしばらくして戻ってきたソルちゃんはまだタリスマンを持っていた。
「ソルちゃん、どうしたの? 受け取っていただけなかったの?」
(レオンねー。だれがくれたものかわからないものは、うけとらないんだってー)
「どうして? ソルちゃんに託せる人なんてそういないのに」
(レオンもそういってたー。でもうけとると、ほかのもうけとらないとダメってー)
レオンハルト様はその美しさから異常に贈り物をされるって聞いたことある。
教会に入ってもいまだに毎週のように届くんだって。
何気に受け取って、恋人だって言いふらされたら困るものね。
きっとそういう面倒なことに巻き込まれたことがあるんだろう。
だからティーカップ・テディベアが好きって公表してないんだ。
レオンハルト様のためになら、あのすごい金額を出す人いそうだもの。
そして受け取れないティーカップ・テディベアを無視する……。
そんなことあのレオンハルト様に出来るはずがない。
そうだ! それだ。
ティーカップ・テディベアに運ばせればいいのだ。
私が送り主だってわかるけれど、レオンハルト様に懸想してないことはあの方が一番よくわかってくださっている。
内密でタリスマン貸しますって手紙を付けよう。
そうしよう。
それなら受け取ってくださる。
「モカ」
「何? エリー」
「あのね、レオンハルト様のところにタリスマン届けてほしいの。
この手紙と一緒にね」
「でもエリーが贈り主だとわかるよ」
「もうあげないの。貸すの。だから私が送り主でいいの」
本当に? とモカが確認するような顔をした。
そりゃ、本当は知られたくないよ。
でもこれは魂の問題だもの。
きっとレオンハルト様はわかってくださる。
それでソルちゃんにモカとタリスマンを託すと、今度は受け取っていただけた。
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