第121話 乙女ゲーム?
2学期の準備を済ませて、あとは学生寮に戻るだけだったが気が進まなかった。
それでも学校は卒業したかった。
あとモカのことを考えなくてはならなかった。
私を苛めていたグループは全員転校すると聞いていた。でもそのことで誰かが私を恨んで、別のグループが苛めてくるかもしれない。クライン様の件は片付いたわけではないのだ。
そして、ドラゴ君やミランダに魔法攻撃をしてきた人がいた。
ドラゴ君は魔法が使えるから問題ないし、ミランダも育てば高位魔獣だから問題ない。
でもモカはただのティーカップ・テディベアではない。聖獣なのだ。
弱いと思われているのに魔法攻撃を退けたりしたら目立ってしまうし、逆に攻撃しても困る。話せることを隠さなくてはならないし、一緒に来ることはとても危険なのではないだろうか?
それでモカにこれまでのことを出来るだけ具体的に話した。
結婚相手として有望な貴族の少年と同じ授業を取っていて親しげにしてくれるせいで、女性貴族から総スカンを食らっていること。
そのせいで平民のほとんどからも無視されていること。
特に激しく苛めてくるグループがあり、水を掛けたり階段から突き落としたり、攻撃魔法も仕掛けてくること。そのせいで少ない友達にも迷惑をかけたこと等。
そして最後の授業で強い魔獣に出会ってとんでもない大けがをしたことを伝えた。
それを聞くとモカは、
「そんなつまらないことで苛めなんて、馬鹿じゃないの⁈」
「邪魔者は排除するのは貴族の常識みたい。そして、勘違いだろうが平民なんてどうでもいいの。私死にかけてまでみんなを守ったのに、私の見舞いに来た人は2人だけだった。それでよくわかると思うの」
「2人は友達なの?」
「ううん、同じ錬金術科志望の子。一人は仕立て屋の子でその子の幼馴染とも知り合いだから2人で来てくれたみたい。もう一人は貴族で私ちょっとだけ勉強を教えていたの。友達は来てくれなかったみたい」
「そうなんだ。なんだか悲しいね」
「うん、もう学校に来ないと思ってるのかも。そのくらいすごい怪我だったそうよ」
「どのくらいだったの?」
「顔全面が大やけどして、指が全部取れるくらい」
「そんなに?想像するだけで怖いんだけど」
「うん。欠損を治すのって信じられないほど高価な治療なの。だから私にエンドさんは買えなかった。ごめんね」
「前世の世界でもそんな無くなった部分を元に戻すなんて出来なかったよ。
義手を取り付けるぐらい。それもすごく大変なんだ。魔法ってやっぱりすごいね」
モカが言うには、前世の世界では科学や医術がものすごく進んでいて、それを魔法の代わりにしているんだという。そのためには電気という力が必要で、それを作るのに熱や蒸気や水や風などを使うんだそうだ。
その電気というものがこちらでは魔力なんだろう。
「それで、私と学校に行くとモカも苛めの対象になるかもしれないの。だからティーカップ・テディベアの里か、クランの従魔舎にいてくれると安心なんだけど。
ジャッコさんとってもいいヒトだし」
「ダメ。そんなにひどい目に遭ってるエリーを見捨てるなんてできない」
「ありがとう、そう言ってくれて嬉しい。
でもモカが特殊個体って知られるのはもっと危険だから。
特に聖獣だってバレると国か教会に取られてしまうの。
一応考えた方法はモカに魔道具を付けてもらうことなんだけど、とても不自由になるからおすすめしない」
「それってどんな感じ?」
「魔道具に沈黙と魔法防御と追跡と隠蔽を付けるの。そしたらその魔道具を付けている間は喋られないし、魔法攻撃からも守られて、誘拐されても居場所が分かるの。
モカのスキルもわからなく出来るし。でもそんなの嫌でしょ」
「何だ、喋らないようにする魔法もあるんだ。あたし声を出さないようにするのはちょっと難しいかもと思ってたんだ。それってずっとなの?」
「私の部屋は一人部屋で、その中なら喋ってもらってもかまわないよ。防音の付与が付けているから何も聞こえない」
「じゃあいいわ。エリーの部屋にいれば自由なんでしょ。ドラゴ君やミランダとはお話しできるし」
「そうだけど」
「あたしはエリーの側にいる方がいい。エンドはあなたを信じてあたしを預けたんだし。それにここにいたら誰とも話が出来ないもん」
「それはそうだね」
「それにしても乙女ゲームみたいなこと本当にする奴いるんだ。信じられない!」
「乙女ゲーム?」
「いろんなパターンがあるんだけど、大体が平民の女の子が主人公なの。
平凡設定だけど可愛くて魔力がすごい、何かとチートな子が王子や貴族のイケメン男子と恋に落ちるように進めていくゲーム。
その中で恋心を起こす要素としてヒロインは悪役令嬢から苛めに会うんだ。
攻略対象たちはそれを見てヒロインを守らなきゃって思うわけ」
「ちょっと待って。いろいろわからない言葉があるけど、私魂の称号が悪役令嬢って人知ってる!」
「マジで?じゃあ、この世界間違いなく乙女ゲームじゃん。エリー、ヒロインなのかな?そんなゲーム知らないけど」
「えーと、その乙女ゲームってのは10歳から恋愛するの?」
「しないよ。早すぎる!だいたい15歳ぐらいからかな?R18なら18歳以上じゃないとだめだし」
「何?あーる18って?」
「えー、そりゃ攻略対象とHするとか、バッドエンドだと娼館に売り飛ばされてモブに
「?えっち?まわされる?ぎゃくはーえんど?さんぴー?」
モカの説明を聞いて愕然とした。
一応恋人になってからの、その……えっちならともかく、他の奴は全部嫌だ!
そんなの絶対に嫌だ!!!!!そんな目に遭うくらいなら学校辞める!!!!!!!
「大丈夫!10歳でそんなのないし。だいたいは平民が貴族の隠し子だとか、聖女の才能があるから養子になったとかで転校してくるから」
「ホントね?本当に大丈夫なのね?」
「たぶん……」
「嫌だ~~~~!」
私は悲鳴に近い叫び声を上げた。
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