第84話 女心
3人が菓子店やってきたときちょっとギスギスした感じがした。女子2人でメルを取り合った後なのかな?
「いらっしゃい、メル、ユナ」
すると3人はポカンと口を開けてこちらを見ていた。
ん?なんか変かな?ああ、女の子の格好しているからか。
「「え、エリー?」」
「メル、この人誰?」と見知らぬ女の子がメルを揺さぶってる。
噂の幼馴染ちゃんだな。
「こんにちは、私はメルとユナと同じ錬金術科志望のエリー・トールセンです。
本日はご来店いただきありがとうございます」
「メルと同級生?こんな子いるって聞いてないけど!」
「メル、いったいどんな風に言ってるのさ」
「えーと、ぼく言ったよ。いつも男装してるものすごく頭がよくて手先の器用な子がいるって」
「だって、だってこんな美少女いるなんて聞いてない!」
「いつもと格好が違うんだよ。ぼくもこんな格好初めて見たし」
ああウチの制服可愛いもんな。10割増し、いや10割なら2倍しかならないか。
10倍増しってやつだな。
「あのー」
「何よ!」
「奥の従業員控えでお茶しません?ユナもいつか呼ぼうと思ってたし」
それで例の従業員控えに案内したら、ドラゴ君とサンディーちゃんがお茶とお菓子を持ってきてくれた。一緒にいるのがメルとユナなので2人はさっさと出て行った。
「あの、お名前は?」
「リアです。メルとはずっと幼馴染で、ウチは染色やってるんです」
なんか目線きついような?メル一体私のことなんて言ったんだ。
「ええ~染色!いいなぁ、やってみたい。見学とかさせてもらえないかな」
「全然面白くないですよ。私も手伝ってるから、爪がいつも黒くて」
「そうだね。気になるよね。メル。リアのために早くクリーン覚えてあげなよ」
「水魔法か、難しいんだよね」
「じゃあ見本ね。
私がリアの両手を取って魔法をかけると爪の中に入った染料が取れた。
「すごい。詠唱ほとんどしないんですか?」
「敬語なしでいいよ。詠唱は魔法をイメージして、場を作るために必要なんだ。だから逆に言えば一言でもイメージと場を整えられればいいだけだからこっちの方が楽なんだ。でも私あんまり魔力強くないよ。メルの半分くらい。もっと少ないかも」
「私誕生日4月だったの。もうちょっと早ければ一緒に通えたのに」
「来年是非来て。私とユナもいるし」
「うん、魔力ギリギリなんだけど」
「私もそうだよ。500超えたぐらい」
「ぼくも手伝うよ」とメルはリアの手を取った。
「うん、ありがとう」
あっ、なんかいい感じ。
そう思ってユナをそっと窺うと、お菓子をバクバク食べていた。
やけ食いですか。私の分はいいけど、2人の分は残しておいてね。
皆でお茶を飲んでると、ビアンカさんが荷物片手に入ってきた。
「アラ、ごめんネ。来客中だった?」
「ビアンカさん大丈夫です。私の学校の友達です」
みんな軽く会釈した。
「休憩時間にちょっとデザインの整理したくてネ」
「『常闇の炎』のビアンカさんと言えば、王妃様にデザインを献上されたあのビアンカさんですか?」
メルが緊張した顔で聞いてきた。蚊の鳴くような声でしかも震えてる。
「そうだけど、ナニ?」
「素晴らしいデザインでした。尊敬しています。よかったら、握手してください」
「メルの家、仕立屋さんなの」と私が補足すると、
「礼儀正しくてイイコ。さすがエリーちゃんの友達ネ」
そういうとビアンカさんはメルの頭をなでなでしてた。握手もしてたけど。
さすがにお仕事の邪魔はいけないと私たちは早めにお茶を切り上げた。
みんなでリアの染色工房の見学はさせてもらえることになり、お菓子を買ってメルとリアは手をつないで帰っていった。
ユナは本気じゃなかったし平気だろうと思いきや、涙ぐんでいたのでびっくりした。
「ユナ、メルのこと本気だったの?」
「別に違うけど、違うけどなんか悔しいの」
「そっかぁ。ユナ偉かったね」
私はユナの背中をさするしかできなかった。
リアの前で不機嫌になったり、意地悪言ったりしないでちゃんと我慢してたんだ。やけ食いはしてたけど。
恋バナ友達にはなれないけど、ユナはいい子でした。
「エリー、今度いい男いたら絶対紹介してね」
「いいけど、貴族はややこしいからやめてね」
「うん」
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