第50話 従魔登録

 

 今日はビリーとドラゴ君を連れて冒険者ギルドへ来ています。卵も一緒です。

 卵を愛するがよくわからないので、赤ちゃんに接するように毎日一緒にいて子守歌とか歌ってみています。

 そしたらビリーに「お前、スキルに歌唱が入ったぞ」って。

 これぐらいで?スキル取得大、取れすぎだから。



「この卵、もうじきだね」

 ドラゴ君が同じ?魔獣の勘でわかるみたい。

「そうなの?嬉しい!早く会いたいな」

 卵も喜んでくれてるのか、ちょっぴり揺れます。ますます嬉しい!!



 初めはツンっとしてたドラゴ君だけど、私の魔力の波動が心地いいらしく、最近は側によくいてくれる。

 初めて会った時のビリーより体が小さいので抱っこもできてかわいいの。

 クランの子どもたちともそれなりに仲良くやっているみたい。お姉さんとしては一安心だ。



 だって私はもうじき学生寮に入らないといけないから。



 そう言ったら、

「ぼくもついていく」

「そうだな、エリーの護衛にいいかもな」

 いやいや、護衛って。学校だよ?



「何を甘いこと言ってるんだ。学校なんて密室だ。中の様子は外には漏れないからやりたい放題だぞ。

お前みたいに田舎者で成績が優秀なのに魔力は大したことないなんて悪目立ちするに決まっている。

しかも男装なんかして変人だ。確実に危ない」

「危ない、あぶない」と2人して頷いている。


「ええ~?ビリーだって男装してもいいって言ったじゃない!」

 しかも変人なんてひどい!



「格好ぐらいお前の好きにすればいい。ただそれが安全か安全じゃないかは俺が判断してダメってことだ」

「大丈夫。ぼく強いよ」

「幼体とはいえ、エンシェントドラゴンだからな。俺と心話もできるし」

「あっ、クララさんとやってるやつだ。私も教えて!」

「ダメだ。まだ成長しきってなくて俺の影響が出すぎてしまう。下手すりゃ廃人だ。それでもやるか?」

「何それ怖い!じゃ心話はまだいいけど……」



 護衛なんて大げさすぎる!と思ったのだけど、

「エリーがいないと寂しい。学校へ行けばぼくもいろいろ学べるよ。生まれてからずっとあの森にいたから、世の中のことあんまり知らないし。ねぇ、ダメなの?」

 瞳をウルウルさせてドラゴくんに見つめられると嫌とはいえなくなってしまった。


「もう~!わかった。でも従魔登録しないとダメだからね」

「うん!」

「ドラゴ、グッジョブだ」

 あら、ハルマ用語?



 ビリーに聞くと、

「先代勇者のユーダイが良く使ってたんだ。あいつはこういう短縮言葉が好きだったからな」

「もしかして直に会ったの?」

「冒険者の素性は聞かないこと。鉄則だろ」

「ビリーはズルい!私の事は聞くのに」


「俺はお前の保護者だからな」

「ぼくの保護者でもあるよ。エリーは僕より年下だから僕の妹だね」

 あっ、私がお姉さんのつもりでした。

 でも200歳だもんね。

 兄さん……なんて思えるか!このぷにぷにぽっぺ!!。



 気を取り直して、本来の目的の従魔登録と行くよ。



 私たちが冒険者ギルドの窓口にいくと、もうすいている時間なのか一人しか座っていなかった。

 受付のお姉さんはナナさんと言って去年まで冒険者だった人だ。

でも向いていないことを痛感してこちらに再就職したばかりの新人さんみたい。

慣れていないのかビリーが窓口に立つとブルブル震えていた。


「と、『常闇の炎』……クランマスターのビリー様と『奴隷誘拐犯討伐』のエリー様……ですか。今日は……こちらにどういった、ご用件ですか?」

「私が学校に連れていく従魔を登録したいんです。1つはこの卵でもうじき孵ります。もう1つはクランマスターからの貸与従魔でカーバンクルです」

 ドラゴくんを抱き上げてナナさんに顔を見せた。


「えっ?カーバンクル?!それは、人化ですか?」

「はい、それで従魔登録したいんですけどお願いできますか?」

「それでは元のカーバンクルに戻ってもらって従魔になったか印を確認したいです」

「はーい」


 ドラゴ君が靴を脱ぐと真っ白な右足の甲に薄い金色のマークが入っていた。ビリーの印らしい。

 左足の甲にも薄い緑色の印があり、こちらは私の印らしい。なんか花模様みたい。何の花かわからないけど。


「この従魔の印、痛くない?」

「全然。ウィルさまは力づくで印つけないからね。弱い奴の方が加減を知らなくて焼き付けたりするんだ」

「それ嫌だね」

「うん、すごくいや」


 ドラゴ君は有名なドラゴンだから従魔にしようと何人も冒険者が訪れて従魔の印を焼き付けられたらしい。全然従ってないからすぐに治ったそうだけど。

 全部返り討ちにしたそうです。おいしいご飯になっちゃったのかな?

うん、聞かないでおこう。



リストア元に戻す

 私が呪文を唱えると、ドラゴ君は銀色のカーバンクルになった。

 カーバンクルの額には赤い宝石が付くそうだけれど、ドラゴ君は青がついている。



 エンシェントドラゴンじゃなかったのかって?

 そうなんだけど、一応王国では封印された竜なのでそのまま解放するのはいろいろ面倒なのだ。

 だから本体の肉体はビリーが多くの守護をかけて守り、魂の一部を近くにいたイイズナに移したらカーバンクルになってしまったのだ。


 動きやすいしこれでいいとドラゴ君もお気に入りだし、私もつぶらなお目目にモフモフしっぽがお気に入りだ。

 細長い体をしているので寒い時には襟巻きにもなってくれる優れものだ。暑い時には氷魔法でつめたくしてくれるんだって。なんていい子なんだ。



 卵が孵れば再登録しないといけないが、無事従魔登録を終えた。

ドラゴくんのことを鑑定で見破られないかちょっと冷や冷やしたけど。

「俺の隠蔽に気づく奴は少ない。人間じゃ無理だな。だから堂々としてればいい」

「あっ、でもあのベルさんって人、隠蔽気が付いてたよ」

「あいつは魔族だからな」


 それよりビリーさんや。いったい私の何を隠蔽してるんですか?

 聞いてもニヤリと笑ったきりだった。

 気になる~!



 さて、次の目的と行きますか。

「あのー」

 私は怖くないのか、ナナさんは普通に接してくれる。


「どうしましたか?エリーさん」

「ニールから来たCランクのハルマさんとシンディーさんに連絡が取りたいんです。私の連絡先をお二人に伝えてほしいんですがお願いできますか?」

「あら、あなたハルマとも知り合いなの?彼素敵よね。こっちに来てすぐにBランクに上がったのよ。ねぇねぇ、よかったら紹介してよ」

「えーと、でもナナさんもお知合いですよね?」

「ギルド職員の方からお誘いかけちゃだめなの。決まりなのよ」

 困った……。ナナさんなんて今会ったばかりの人だし。紹介も何も知らない人だ。



「クランハウスの方にお呼びするようにとマスターに言われていますので。

ナナさんもいらっしゃいます?『常闇の炎』のクランハウスに」

 後ろで遅いって顔して立っているビリーに気が付いてビクッとしていたからきっと来ないだろう。


「エリー、まだぁ?」

 人化したドラゴ君にせかされて、とにかく伝言だけでよくなった。

 


 ビリー、ありがとう。怖がられているのもたまには役に立つね。





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