修学旅行 ⑦
青色の文様のようなものの描かれた服を着た女性による、聞き語りが始まる。
皆が皆、興味深そうにそれを聞いている。
アイヌの言葉についてとか、自分の名前についてとか――、そういうものをアイヌの血を引く人が語ってくれていた。名前一つにもアイヌとしての言葉の意味があるのだ。
あとムックリと呼ばれる竹製楽器での演奏も行われた。
楽器って一般的なもの以外は全然知らなかったけれど、こういう民族独特のものもあるんだなと思った。それに色んな音が出ていて聞いていて面白かった。
その語りが終わったあとは、コタンの中を見て回った。今とは全然違う文化と暮らしが見て取れて楽しかった。
花音に何が楽しかったとか詳しく言いたいけれど、来年花音も同じ修学旅行先ならあんまりしゃべりすぎるのも楽しみがなくなるだろうか? その辺は、花音にネタバレになってしまうかもしれないけれど言ってもいいか聞いてから言おう。
コタンの中を見て回った後は、催しが行われるエリアへと向かう。
そのエリアに向かうまでの光景もとても美しいものだった。
なんだか散歩コースなどにしてもよさそうな感じがする。そんな気持ちになって歌や踊りなどの催しのチケットを確保した後、時間まであたりを散歩した。
周りには鹿の像みたいなのもおかれていて、北海道は鹿が身近な存在なのだろうなと思った。
鹿とか熊とか、そういった俺が実際に見たことないような動物が身近な北海道は、日本の中でも独特な雰囲気がする。
しばらく散歩をした後に、時間になったので催しの行われるホールの中へと足を踏み入れた。
空いている席に座って、始まるのを待つ。舞台を囲むように階段のように段差の座席になっていて、俺たちは前の方に座った。
一部に他の班の同級生たちの姿も見えた。
あとは普通に一般のお客さんの姿も見られる。
正直20分ほど行われる催しはどんなものだろうかと俺にはあまり想像はつかなかった。さっきのコタンで行われた語りよりも長いけれど、どのような感じだろうか?
催しが始まる。
――不思議な音での、歌が紡がれる。
意味は分からないけれど、なんだか別世界に誘われているようなそんな気持ちになる。
こういう意味がないように一見したら見える言葉にも意味があって、それで意思疎通が出来るのは不思議な感覚になる。
不思議な歌に、心惹かれる。
踊りも洗練されていて、民族としての独特の踊りだったり、見ていて壮観だった。
俺はそういう風に身体を動かすことは得意ではないから、余計にそういう踊りが凄いなと思った。語りも含めて色々と楽しい経験だった。
そうやってアイヌの博物館で過ごしていると、あっという間に時間は過ぎていった。
アイヌの博物館の滞在が終わると俺たちは旅館へとバスで向かうことになった。
バスの中でアイヌの博物館でどこを見て回ったかというのを違う班のクラスメイトたちとも話し合った。一つの班は、アイヌの博物館の外が気持ちよかったので結構外でのんびりしていたりしたようだ。
「楽しかったな」
「そうだな。アイヌって名前しか聞いたことなかったけれど、ああいう専門の博物館あるんだなって楽しかった」
ゆうきに声をかけられて俺もそう返事をする。
バスの中でクラスメイトたちと会話を交わしながら旅館へとついた。それにしても修学旅行は楽しくてあっという間に時間が過ぎていく。
もう空はすっかり暗くなりかけているので、もう二日も過ぎたことになる。
旅館での食事も美味しいものだ。
北海道はおいしいものが多い。バイキング形式のものだったけれど、魚もお肉も美味しいのでついつい食べて過ぎてしまったりする。デザートも美味しいものだ。
女子たちはデザートを沢山食べていた。俺も甘い物が好きなので、結構沢山食べてしまった。
「喜一、沢山食べているな」
「おいしいから。花音にも食べさせてあげたい」
俺が花音のことばかり口にしているからか、ゆうきたちにも笑われてしまった。
花音の顔を二日間見れていないだけで俺はすっかり寂しい気持ちでいっぱいになる。修学旅行は楽しいけれど、花音と離れるのは少しだけ寂しい。
食事を取った後は、大浴場に向かった。大きな旅館のお風呂は大きくて、こういう大浴場に入ってわちゃわちゃするのも楽しいものだ。
お風呂から上がったあとは、大部屋で同室のクラスメイトたちと会話を交わしている間に俺はいつの間にか眠ってしまっていた。
――修学旅行の二日目はそうして終わった。
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