花音の誕生日 ②
「お兄ちゃんかな?」
花音はそう言いながら玄関に向かっていった。カメラで来訪者を確認することもせずに向かうのは、ちょっと不用心だ。
そう思いながらも俺は花音が驚くだろうなぁとソファに座ったまま楽しみにしていた。
「え。永沢先輩と的場先輩!? どうしたんですか?」
驚くような花音の声が聞こえてくる。それと同時に誕生日おめでとうという声も。それからしばらくして花音が慌てた様子でこちらにやってくる。
「きー君、何サプライズしとっとよー!! びっくりしたやんか!!」
「嫌だったか?」
「嫌なわけなかよ!! いーぱいお祝いしてもらえっとは凄く嬉しかもん!!」
花音は俺の方に駆け寄ってきてそういう。
「なんか、前より仲良くなっている……?」
「永沢君!! 君は前の花音ちゃんと上林君の様子を見たことあるの?? 是非教えて!! そのころより今が仲良くなったっていうのならば、なんて素晴らしいのかしら」
「え、ええっと……」
ゆうきに的場先輩が絡んで、ゆうきが戸惑っているのが見えた。
そういえば、花音がこんな風に俺に方言をバンバンだすようになったのって、この前のお出かけからだったっけ。ゆうきが家に来たのはそれよりも前だったか。……なんだかすっかり花音が方言だったり、ため口だったりするのに慣れ切ってしまっているなぁと思った。
「おい、永沢が困っているだろう。喜一の友人を困らせるな」
「もう天道さんは煩いですよ。天道さんには言ってませんって」
的場先輩と凛久さんが相変わらず口喧嘩を初めて、ゆうきが戸惑っている。
「的場先輩、凛久さん、今日は花音の誕生日なんですから喧嘩はよしてくださいよ」
「そうね。花音ちゃんの誕生日だから天道さんと喧嘩している場合ではないわ」
「そうだな。花音の誕生日にこんな女と喧嘩なんて時間の無駄だよな」
……俺の言葉に似たようなことを言う二人はやっぱりそっくりだよなぁとそんな風に思ってしまう。
「真似しないでください」
「お前こそ真似せんでくれ」
やっぱり似ているよなと思いながら、二人をなだめて三人が持ってきてくれたものを並べていく。
生クリームのイチゴが乗ったケーキは的場先輩が手作りをしたものである。その姿を見て、お店で売っていてもおかしくないと俺は驚いてしまった。
「わー、これ的場先輩が作ったのですか? 凄いです」
「花音ちゃんに喜んでもらおうと頑張ったの。こんなに喜んでもらえて私は満足だわ。あとね、こっちの料理も作ってきたわ」
ケーキ以外にもいくつか的場先輩は料理を作ってきてくれたらしい。それでも足りないかもしれないと残りの料理はゆうきが買ってきたようだ。
「的場先輩料理上手なんですね。すごーい!!」
花音はキラキラした目で、尊敬するように的場先輩を見ている。
「なぁ、喜一……本当に俺場違いじゃないか? 天道さんに、そのお兄さんに的場先輩が揃っている場にいるって」
「大丈夫だろ。花音も喜んでいるし」
ゆうきが心配そうに言っているが、花音も喜んでいるし、俺としてもゆうきがいてくれた方がうれしいのでそう口にした。
「的場先輩、食べていいですか??」
「ええ、もちろんよ」
「わーい。じゃあ、食べましょう」
五人で座り込んで、机を囲む。並べられている料理を皆で食べる。的場先輩の作ってくれた料理も美味しいし、ゆうきが買ってきてくれたチキンなども美味しい。
「うまかー。的場先輩の料理、凄かね。私、的場先輩の作ってくれた料理好きですよー」
「良かったわ。花音ちゃんに喜んでもらえると私も作った甲斐があったわ」
花音が嬉しそうに、美味しいとにこにこ笑っていて、俺も嬉しい気持ちになる。折角の誕生日だから、花音が楽しそうにしてほしいって思っていたから。
「あ、そうだ。喜一これ」
「ありがとう、ゆうき」
ゆうきから俺が買っていたプレゼントを渡される。大きな袋のを渡される。花音が俺の方をキラキラした目で見ている。自分へのプレゼントだろうと、分かっているのだろう。
「きー君、それ私へのプレゼント??」
「そうだよ。ほら、花音。誕生日おめでとう」
「ありがとー!!」
花音はにこにこと笑いながら袋を受け取る。そしてそのまま袋を開けた。
「ブーツと、文房具!? わーい、ありがとう、きー君!!」
花音への誕生日プレゼントとして買ったのは、茶色のブーツである。冬だし、似合いそうなものと考えて買ったのだ。あとは誕生日だしということでもっと他にも買おうと思い至って文房具を買った。
シャープペンシルやノートといった学校で使えそうなものを買っておいた。
ちなみに花音の足のサイズは凛久さんに聞いた。
「花音、俺からも誕生日プレゼント」
「私もこれをあげるわ」
「天道さん、俺も」
俺に続いて凛久さん、的場先輩、ゆうきも誕生日プレゼントをあげていく。花音はそれぞれからのプレゼントに嬉しそうに笑みを溢した。
その後、ようやくケーキを食べることになった。的場先輩の作ってくれたケーキは美味しくて、俺と花音は二人とも「美味しい」と笑顔になってしまった。
「まぁ、二人とも甘いものが本当に好きなのね。今度、また何か作ってあげるわ」
「ありがとうございます!! というか、プレゼントももらえて、甘い物も作ってもらえて本当嬉しいですよー。ありがとうございます!!」
的場先輩は喜ぶ俺達を見て、また作ってくれるなんてそんなことをつげるのだった。
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