花音にどうするか聞く
「的場先輩ってそういう人なんですね!! きー君との仲をバレたのはびっくりですけど、的場先輩が言いふらすような人じゃなくて良かったです」
さて、家に帰宅した時には花音はもうすでに俺の家にいた。いつも通り、にこにこしながら俺のことを出迎えた花音は、くつろぎ切っていた。
そんな花音は、俺が的場先輩の事を告げたら、驚いた顔をしていた。けれど、次の瞬間には笑顔を浮かべていた。
花音は的場先輩に対して好印象を抱いているようだ。
「それで花音はどうしたい? 的場先輩は俺と花音が一緒に居る所を見たいらしいんだけど」
「んー、私は別に構わないですよ。私はきー君と仲良しだと、周りに示したいなーって思ってたし。的場先輩なら、私が幾ら喋っても受け入れそうな気がしますし」
「花音がそういうなら了承するか」
「あ、でもあれですね。聞いている限り、大丈夫だと思いますけど、なんか不測の事態があった時のためにも、お兄ちゃんがいる時の方がいいですかね」
「そうだな。的場先輩も来るならゆっくりできる土日の方がいいかもしれないしな」
「ですね!!」
花音がそんなことを言うので、俺は的場先輩に連絡を入れることにした。
花音から了承をもらったこと、土曜日でいいかということ、そしてその時には花音の兄もいることを連絡する。的場先輩からはすぐに返事が返ってきた。早すぎてびっくりした。
かえってきた返事には、了承と喜びの言葉が書かれていた。文面からでも、花音と俺の様子を見れることに喜び、凛久さんと会えることに喜んでいることが分かった。
「花音、的場先輩、土曜日の昼ぐらいからくるって」
「りょーかいです!! お兄ちゃんにも伝えとかんとね」
「そうだな」
そういえば凛久さんに人がくることを伝えることなく、的場先輩に返答してしまっていた。凛久さんに連絡を入れる。……こっちもびっくりするぐらい返事がはやい。凛久さんも本当にいつも返事がはやいよな……。
「お兄ちゃん、なんていっとります?」
「その女が悪い奴なら俺が花音と喜一の事を守ってやるみたいな……。何で俺も守る対象になっているんだ……?」
「ふふふ、お兄ちゃんもきー君のこと、気に入っとるもん。それにきー君、グイグイこられるとなんやかんや受け入れてしまいますでしょ? だから心配しとるんやと思いますよ。私もきー君がいつかグイグイ来られて、押し切られて大変な目にあわんか心配やもん」
「いや、それ俺の台詞だし。花音は人に対する警戒心がなさすぎるから俺は花音がいつか大変な目に遭わないか心配だから」
「ふふふー、互いに心配しているですね。でしたら互いに守りましょうよ。私はきー君が変か人に変な目にあわされんように守るけん、きー君も私のこと守りましょうよ」
「そうだな。側にいる間はちゃんと花音が大変な目に遭わないようにするよ」
それにしてもお出かけが終わってから、花音の口調がすっかり砕けている気がする。いや、まだ敬語も含まれているけど……でもなんというか、前より口調が砕けて、方言も出ている。
それだけ花音がもっと俺に心を許してくれたという証だろうか。
「ふふふ、私がきー君のこと守るけんね」
「ああ。花音が守ってくれると思うと心強いよ」
「私もきー君が守ってくれっと思うと、めっちゃ心づよかよ」
花音はそう言いながらにこにこしている。花音はソファに寝転がりながら漫画を読んでいたのだが、はっとなったように洗い物をしている俺の方を向く。
「ねーねー、きー君、的場先輩来るならおもてなしするべきよね? どがんする? お菓子とかでもかっとく? 甘いもんとか好きなんかな、的場先輩って」
「さぁ……? どうなんだろう。俺も的場先輩のことはそんなに知らないからなぁ」
「んー、とりあえず昼ご飯作っておきます? 的場先輩に昼食ふるまいますよーって送っといて、ふるまいません?」
「いいな。それも。連絡しておくか」
俺と花音はそんな会話を交わしてから、もう一度的場先輩に連絡をしておいた。また返事がはやかった。はやすぎて本当にびっくりする。
「的場先輩、昼食ごちそうになりますだって」
「どがんします? どんな料理にしましょうか」
「んー、寒くなって来てるし、四人で食べるのならば鍋とかでもいんじゃないか?」
「鍋!! いいですねー。すき焼きとかどうです? お客さんがくるのなら、特別にっておいしいお肉買ってもいいですねー」
「すき焼き美味しいよな」
「うん。めっちゃうまかよね。お鍋って大好きなんやけど、すき焼きってよくご飯も進むんよねー」
花音もにこにこ笑って賛成しているので、土曜日にはすき焼きをすることにした。余ったら夕飯に食べようという話になったので、金曜日に材料を買い込むことにする。
あとは部屋の中の掃除だろうか。
ある程度は綺麗にしているし、お客さんがくるのならばもっときれいにしていたほうがいいだろう。
「花音、土曜日の朝までに掃除しないか?」
「よかよ。そうね、お客さんくっけんちゃんと掃除せんといけないですよね」
「そうだよな。お客さん呼ぶにはちょっと散らかっているもんな」
「じゃあ帰宅してすぐに掃除機かけましょうよー。夜遅くだと怒られるけど夕方ならぎりぎりよかと思うし」
「だな」
掃除機をかけるのは、夜遅くだと防音設備があろうともご近所さんに迷惑となるだろうし。
そんなわけで土日に的場先輩を家に呼ぶことになったので、それまでに掃除をしたり、おもてなしの準備を俺と花音はすることになった。
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