プレゼント探し
『花音、今日は帰るの遅くなる』
『了解です。きー君家で、夕飯用意していていいです?』
『ああ。ありがとう』
ある平日のこと、花音とそんなやり取りをスマホですませる。
次の土日には、もう花音と出かけてしまうのでプレゼント選びをするにしても、放課後ぐらいしかない。
花音にそれを連絡すれば、花音は俺の家でのんびりするつもりらしい。まぁ、花音は変な事もしないだろうし、別にそれは構わない。
放課後、ゆうきと一緒に花音へのプレゼント選びに出かけることになった。
放課後になって、ゆうきと一緒に帰宅の準備をして、デパートに向かう。学園の中では、花音の話をするわけにもいかないので、学園から出てゆうきと会話を交わす。
「それで何をプレゼントするんだ?」
「んー、まだ悩んでいるんだよな」
花音へのプレゼントを結局どうしようかと考えると、これ! とぴんとくるようなものは今の所思いつかない。
凛久さんに相談して以来、ひたすら凛久さんからも何をあげるんだとか、花音には~とか色々連絡がきているんだよな。あの人、多分、花音の話を思いっきりしたいだけな気がする。
凛久さんは大学では花音へのシスコンぶりをそんなに出していないのだろうか? 居たら俺じゃなくてそっちに語る気がするんだけど。
「天道さん、何が喜ぶんだろうな。俺は二度しか会っていないからなぁ……」
「多分、花音は何でも喜びそうな気がするけど。あいつ、びっくりするぐらい簡単な事でびっくりするぐらい喜んだりするからなぁ」
本当に花音は驚くぐらい無邪気で、ちょっとしたことで俺に感謝するしな。人よりも、幸せのハードルが低いというか。それは花音の良い所だと思うけれど。花音と過ごしていると、俺もちょっとしたこの日常が幸せなんだなって気持ちになるし。それに花音がにこにこしているだけでも何だか穏やかな気持ちになるし。
学園で聖母様みたいだって言われている花音も、家にいる花音もそう考えると周りに幸せを与えているっていう部分は共通しているよな。素を学園では出していないとはいえ、花音自体がそう言う素敵な部分を持っているからこそ、そう呼ばれるんだよな、きっと。
そう考えるとやっぱり俺の家に花音が入り浸っているのが不思議だし、俺の方が全然釣り合わないような感覚になる。花音はそんなこと聞いたら「気にしなくていいです」というだろうけど。
そんなことを考えながら、ゆうきと一緒にデパートの中をぶらぶらと見て回る。花音が喜びそうなプレゼントを是非ともあげたいので、色んな所を見てから購入したい。
まず見たのは装飾品のエリア。髪止めやネックレスなど、女の子が喜びそうなものが沢山並んでいる。花音は髪も長いから、髪止めとかでもいいなぁなどと思う。花音の黒髪に似合う髪飾りや髪止めって沢山あるしなぁ。
よさそうなもののピックアップしておいて、次のお店にいく。次は文房具を見に行く。花音と一緒に勉強をしているから、花音がどういったシャーペンを好んでいるか分かるから、花音が好きそうなものを探す。
キャラクターものも好きだっていっていたし、こういうのも好きそうだなとか、そういう文房具も沢山あった。
これも好きそう――といくつも候補が出来る。
「花音が好きそうなものが沢山あるな」
「そうなのか? それは良かった。次はどこいく?」
「ぬいぐるみとか小物もみる」
「服とかは?」
「んー、いきなり服とか、花音も引くだろ。でも帽子とかでもいいか……」
恋人でもない男にいきなりサイズがぴったりの服でも渡されたらビビるだろう。うん、俺が花音の立場なら引くかもしれない。でも考えてみれば帽子とかでもいいなぁと思う。あとはバックとか。
「服でもあの様子だと天道さん、引いたりしないと思うけどな」
「……いや、まぁ、俺もそうだと思うけど」
花音は心が広いから引いたりはしないと思うけど、でもなんというか、正直言って花音に引かれたら俺はショックだ。なので、はじめてのプレゼントだし、服以外がいい。
デパートの中に帽子屋と鞄屋があったので、色々と見て回る。そうすると、一つの帽子が目についた。白い帽子。カジュアルな雰囲気の帽子は、ボラ―ハットという種類の帽子らしいと、店員さんが教えてくれた。何だか花音に良く似合いそうだ。
帽子をかぶっている花音が思い浮かんだので、これを花音のプレゼントにすることにする。……他の花音が喜びそうなものは、また来月にある花音の誕生日の時のプレゼントにでもしようか。
「買います」
店員さんにそう告げて、帽子を購入した。プレゼント用にラッピングしてもらう。しかし袋に入れてもらってからはっとなる。こんな大きな紙袋を持って帰ったら花音にすぐに何か買ってきたことがばれてしまうのではないかと思ったのだ。
「あー、もう家にいるんだっけ」
「ああ。俺の家でくつろいでいるらしい」
……スマホに聞いた連絡を見た限り、俺の家の中で花音は自由に過ごしているようだ。基本的に花音はリビングにいて、俺の部屋にはあまり入らないが、他の場所はすっかり花音が物の場所とか把握してしまっている。
玄関からリビングを通って自分の部屋までこのプレゼントを持ち運ぶのも難しいだろう。
……しかしこの紙袋じゃバレバレだしなぁ。どうしようかなと考えていたら、「他の物を買ってごまかすとかは?」とゆうきに言われた。そうか、他の自分のものでも買って、帽子の存在を花音に悟らせないようにしたらバレはしないか。
「しかし天道さんが喜一の家を隅々まで把握しているってすごいよな。もはや半同棲みたいじゃないか」
「半同棲とは、違う……と思う」
いや、しかし確かに花音は最近だともう朝一で俺の家に来て、俺の家で朝食を食べ、学園に向かう。そして放課後は鞄を持ったままそのまま俺の家に帰宅することもある。夜も俺の家の中で食べて、就寝時間になるまで俺の家にいる。
土日に限っては花音だけでなく凛久さんがきて、土曜日の朝からいて、土曜日は泊って、日曜日も夜までいる……、いや、確かに花音は気づけば俺の家にずっといるなぁ……。
気づけば当たり前の日常になっていたけれど、客観的に見たら変な関係だよな、俺と花音。
でもまぁ、俺も花音がいると楽しいし、花音も進んで俺の家に来ているし……、周りが変な関係だなと思ったとしても、まぁ、いいかと思うのだった。
その後は自分の服を何着か購入し、その袋の中に花音へのプレゼントを混ぜるのだった。
家に帰宅すると、「きー君、何買ったんですか!? お洋服!?」と、中身を見たそうに花音がキラキラした目でこちらを見ていて少しひやりとした。
だけど、「花音と出かける時用にかったからその時まで待ってろ」とゆうきが考えてくれた言い訳――まぁ、実際に花音と出かけるように買ったから嘘ではないけれど――を告げれば花音は我慢した。
「きー君、わざわざ買ってくれたのですか!? わー、きー君が私とのデートのために服を買ってくれたとかうれしいです!! きー君も私とのデートを楽しみにしてくれてるんですね。私も凄く楽しみです」
「ああ。楽しみだ」
「ふふ、きー君が楽しめるようなプランを考えとっけん、楽しみにしとってね」
あまりにも楽しみだと興奮していたのか、花音は訛っていた。にこにこと笑っている花音の言葉を聞きながら俺はいそいそと自分の部屋に戻り、花音のプレゼントを隠すのであった。
花音が俺の部屋に入ることはあるかもしれないが、流石に洋服ダンスの中はあけないだろうし。うん、此処でいいな。
というか、このプレゼントどのタイミングで花音に渡そう? 多分、出かける前も花音は俺の部屋に居そうだし、出かける前に渡すか? などと俺は思考するのだった。
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