文化祭の準備③
「きー君は今日、どんな準備をしました?」
文化祭の準備を行っていても、花音との日々はかわらない。その日、俺が文化祭の準備を終えて、家に戻れば、既に花音が家の中にいた。
あれから花音の劇の練習には、毎日のように付き合っている。花音は俺が演技をすると、楽しそうにしていた。一緒にやる劇の練習が楽しいからか、花音は日に日に劇に力が入っているようだ。俺は学園での花音の演技は確認していないが、花音が劇をやっているのを覗いたクラスメイトたちがそんなことを言っていた。
花音は俺に本番の劇に見てほしいらしくて、練習は見ないでほしいらしい。
「俺の方は相変わらず屋台の準備だな。チョコバナナの試食が凄く美味しくていっぱい食べれて嬉しい」
「あはは、きー君、甘いもの好きやもんね。私もきー君がそれだけ嬉しそうな顔しているの見ると、私も是非食べに行きたい」
花音はそう言って、にこにこと笑っていた。
クラスメイトの間で、俺は甘いもの好きというのがクラスでは広まりつつある。美味しそうに食べるからと皆、俺に甘いものをよくくれるようになった。特に明知はよく差し入れといってお菓子を持ってくる。
対してクラスでも人気者というわけでもない俺でもこれだけ皆が色々くれるのだ。きっと花音がこれが欲しいとかいったら凄いことになるのだろうなと思う。
ということを花音に言ったら、
「そうですね。でもそうやって大量にもらうのも悪いですし。あと私可愛いから面倒なプレゼントとかもらう可能性もありますしね。お兄ちゃんとか、おまじないとかいって手作りチョコに色々仕込まれてたりしてましたしねー」
などと言っていた。
確かにちょっとしたものならもらう分には良いかもしれないが、色々もらうとそういう気分になるかもしれない。というか、色々仕込まれているって大変だ、もてるのも。
「あ、きー君からなら幾らでも受け取りますよ。きー君なら手作りのものでもそういう心配はありませんし」
まぁ、確かにそういう信頼関係がなければ互いに作った夕飯を食べれたりもしないよな。
俺も例えば、何かやらかすかもしれないって相手だったら部屋に入れたりしないと思った。
文化祭の準備で俺と花音はそれぞれ忙しいが、花音は相変わらず俺の家に来ていた。ただ花音が劇の練習で俺よりも疲れているというのもあり、俺が夕飯を作る方が多い。
週末になれば、凛久さんが当たり前のように俺の家にやってきて、凛久さんも参加して三人で花音の劇の練習に付き合っていた。
「――姫よ、私は姫のためにならこの身を幾らでも費やそう」
ちなみに凛久さんは超、ノリノリだった。本当に、凛久さんも花音と同様、こういうこと真剣にやるよな。というか、二人ともスイッチが入ると演技に気合が入っていて、そこに俺が混ざっていいのだろうかという気持ちになる。
うん、俺だけなんというか、釣り合わない感があるというか……っていうのを正直に口にした。
そうしたら二人して、
「そんなわけない!! きー君と一緒にやる方が楽しい」
「そうだな。二人でやるより、三人でやる方が楽しいぞ」
そんな風に言った。
俺と一緒に劇の練習をして楽しいとそう口にしてくれる。そんな風に言われると俺も楽しんでいることもあって、結局一緒に劇の練習をしてしまうのであった。
俺が凛久さんにもチョコバナナの話をしたら、凛久さんもチョコバナナを食べると言っていた。
文化祭ではどれだけ美味しいものがあるだろうかとか、花音の劇がどんな出来だろうかとか、色々楽しみだ。
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