今日も泊まるらしい。
昼食を終わったあと、俺と花音はいつも通り自由気ままに過ごしていた。凛久さんも俺の家に来るのは二回目だし、先週の様子を見ていたからか自由に過ごしていた。
とはいえ、凛久さんは花音に結構話していたが。ただ、花音はテレビを見ていたりして、凛久さんへの対応は結構適当になっていた。
それでもめげずに花音に話しかけていた凛久さんは、本当に花音と話したくてたまらないのだろうなと思った。
俺は花音とお隣さんだからこそ、毎日のように花音と会話を交わせているが凛久さんはそういうわけでもないし、シスコンな凛久さんからしてみれば寂しいのかもしれない。
「そういえば、喜一は今高校二年生だよな?」
「はい。そうですね」
「大学は決めているのか?」
凛久さんに突然そんなことを聞かれた。何だか花音も凛久さんも結構唐突に話を振ってくる。一瞬何を言われたっけと言う気持ちになるのも仕方がないことだろう。
「まだですね。ある程度決めていますけど」
ある程度どんな学部に行きたいかというのは俺も考えている。高校二年生にもなれば、何処の大学に行きたいかぐらい考えているものなのである。
進路希望とかも出さなきゃになるし、来年は大学受験に備えて勉強尽くしになってしまうかもしれない。
「なら、××大学に来ないか?」
「××大学ですか……まぁ、候補には入ってますが」
凛久さんがあげた大学は調べて、少し興味を持っていた大学だった。学部数が多く、自由な校風が売りな大学である。就職率も良いところだが、それなりに倍率も高く、勉強を頑張らなければ俺は入学が出来ないだろう。
「俺の通っている大学なんだ。喜一が後輩になるのは楽しそうだ」
「お兄ちゃん! またきー君と勝手に仲良くなろうとして……!! あ、でもきー君がその大学入るなら私もその大学入りたいなぁ」
何故か俺に同じ大学に入学してほしいなどといってくる凛久さんと、俺が入学するなら自分も入ろうかななどと簡単に言ってのける花音。
大学を決めるなんて結構重要な選択だと思うのだが、そんなに軽く決めてもいいのだろうか。まぁ、花音は頭が良いし、どの大学でも簡単に受かるかもしれないが。
「そうなんですか。なら、色々質問してもいいですか? 興味はあるんですけど、正直、俺の学力で受かるかどうかも怪しいんですけど」
「なら、俺が勉強見ようか?」
「私も勉強見ます!!」
……凛久さんは年上だからともかく、花音は俺より年下なのにそういうの見れるのだろうか? とそんな気持ちになったが、花音は結構先まで勉強を進めているらしい。あとは凛久さんが大学受験する時の本を読んだりして、結構解けるらしい。
本当に二人とも頭が良いんだなと思う。年下に勉強を教わるというのは不思議な気持ちになるが、それで大学受験が上手くいくのならばそれは良いことだろう。
「見てもらえるとありがたいが……」
「なら此処に来た時に見よう」
「いつでも私はきー君の勉強を見ますよ!! お兄ちゃんよりもちゃんときー君の先生を常にやるんですから!!」
また、花音がよく分からない所で凛久さんに張り合っていた。
それにしても本当にそこまで勉強をみてもらうというのならば、ただでやってもらっていいものではないと思う。花音が頭が良いのは知っているし、凛久さんも頭が良いみたいだし、そんな二人に勉強を無料で見てもらうのはどうかと思う。
「本当にがっつり見てもらうのならば、家庭教師代とか払った方がいいですか?」
「別にそういうのはいらない」
「いらないですよ!! 私ときー君の仲じゃないですか。そんな遠慮はいりません。そもそも毎日家に押しかけて、私の方がきー君に面倒かけてますもん」
家庭教師代でも払った方がいいのか、と口にすればすぐに二人はそんな風に言う。
本当に良いのだろうかと思うが、金銭的なものを二人は受け取らないだろう。勉強を見てもらえるというのならお菓子とかそういうものでさりげなくお礼を伝えようか。そんな風に俺は考えた。
「さっそく勉強してもいいが、どうする?」
「いえ、今日はまだいいです。今日は凛久さんの通っている大学の話を聞きたいです」
それから俺は凛久さんに、凛久さんの通っている大学の事を沢山聞いた。例えば構内がどうなっているかとか、食堂の美味しいメニューの話だとか、学校行事だとか、どんな風な過ごしやすさがあるかとか。
凛久さんは一つ一つ丁寧に答えてくれた。真面目な様子で答える凛久さんは、正直言ってかっこいいと思ってしまった。……花音に向かってシスコン全開な様子を見ると、そういう風には思えないのだけど、真面目な表情の凛久さんはかっこいいのだ。
花音がいない前だといつももしかしたらこうなのだろうか? それだったら凛久さんがモテるのも頷けるよなと思うのだった。
すっかり凛久さんと話し込んで、夜になった。
凛久さんはまだ俺の家にいる。まだ帰らないのかと、「今日はいつお帰りになりますか?」と聞いたら、「帰らないぞ。先週と同じように泊るぞ」と答えられてしまうのだった。
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