あっという間に週末になった。


 あっと言う間に週末になった。この一週間は、文化祭の準備をしながら、のんびりと過ごした。身体を動かす体育祭よりも、文化祭の方が俺は好きだ。ああやって騒ぐのは嫌いではないけれど、文化祭の方が楽しいのだ。



「きー君、文化祭楽しみですね」

「そうだな。楽しみだな。花音は結局主役をやるんだろう?」

「ええ、そうですよ。ふふふ、オリジナルの劇なのです。ファンタジーな世界のお姫様を演じるのですよ。私の可愛いプリンセス姿を是非見てくださいね!!」



 無邪気に微笑む花音。



 なんでも聞いた話では、花音のクラスでは趣味で物語を作っている女子生徒がいるらしい。その女子生徒が楽しんで作った話であるらしい。話を聞いた限り、面白そうな物語だったからこそ、俺は見に行こうと思っている。

 花音も俺に見てほしいと思っているようだしな。花音に見に来てくださいと言われると見に行こうって気になるんだよな。


「でも安心してくださいね。キスシーンはなしですから。ふふふ、私の唇は軽くないのですよー。まぁ、クラスメイトたちも私のキスは大事って思ってくれているみたいで。まぁ、そんなのあるのならば私は流石に抗議しましたけどね」



 ソファに寝転がって、そんなことを無邪気に言う。

 そうしていれば、ピンポーンとチャイムが鳴った。



「あ、お兄ちゃんですね。出迎えます」



 花音はソファから起き上がり、玄関へと向かっていった。そして、「いらっしゃい、お兄ちゃん!!」と元気よく口にする声が聞こえてきた。



「お邪魔する」



 そんな声と共に、凛久さんが家に上がってくる。何故かすっかり我が家のように花音が凛久さんを連れてくる。



「喜一、一週間ぶりだな」

「はい。一週間ぶりですね、凛久さん」

「花音の写真が手に入ったんだろ? 是非見せてくれ!!」

「お兄ちゃん!! いきなりそれ!? もー、押し掛けてきているんだからいきなりそんな言わないの!!」



 凛久さんはいきなり写真が欲しいと言い放ち、花音に怒られていた。怒られていても、凛久さんは嬉しそうな顔をしている。とてもデレデレしている。



「凛久さん、写真を渡しますよ」

「喜一、ありがとう!! あー、可愛い」

「俺の友人が手に入れてくれたんで、そっちにお礼をいってくれればと」

「ふぅん。そうなのか。じゃあ、俺がありがとうって言っていたと伝えてくれ」

「はい」



 俺は今度ゆうきに会った時に伝えようと考えるのであった。花音は凛久さんに呆れた様子を見せながらも、「お兄ちゃんは生の私より、写真の私に夢中なん?」とそんな可愛いことを言っていた。多分俺と凛久さんが写真の話題に夢中になって寂しくなったのかもしれない。



「花音!! 可愛いなぁ。俺の妹!! 生の花音が一番可愛いよ。超可愛いよ!! でも体育祭の花音の写真も可愛いよ!! なぁ、喜一、可愛いよな?」

「ああ。写真の花音よりも、現実の花音の方が一緒にいて楽しいしな」

「えへへ、そうですか」



 花音は凛久さんと俺の言葉に、嬉しそうにへにゃりと笑った。



 やっぱり動いている花音は無邪気で、楽しそうでいいなと思う。学園にいる花音よりも、目の前でにこにこと笑っている花音の方が俺は好ましいと改めて思う。

 花音の言っている言葉は本心だしな。花音は結構人のことを見ているから、俺が嘘で言っていたらこんな風に笑わなかっただろうなと思う。



「ふふふ、お兄ちゃん、きー君、なら写真を見るよりも、私と沢山話しましょう!! 沢山お喋りして、沢山遊びたいんよ」

「もちろんだ!!」



 凛久さんが急に大きな声を出して、即答をしたからちょっとびっくりした。この兄妹、本当に元気だよな。



「今度の文化祭でね、可愛いプリンセスやるの」

「プリンセスかぁ、演じなくても花音はいつだって俺にとってのお姫様だけど、着飾った花音はとても可愛いだろうな。花音のお姫様を見に俺は文化祭に行くぞ!!」


 凛久さんはそう言ったかと思えば、俺の方を向いて続ける。



「喜一も花音の劇を見に行くだろ? 一緒に見るか?」

「いやいやいや、花音の兄である凛久さんと一緒に居たら目立つでしょう!!」

「ん? 別にいいだろ。文化祭で知り合った頃にすればいいだろ?」

「ちょっと待った!!」


 凛久さんが俺と文化祭で知り合った事にして、劇を見に行こうとなぜか提案してくる。返答に困っていると花音から待ったがかかった。



「なんでお兄ちゃんだけ、きー君と学園で仲良くしようとしとっとよ!! 私だってきー君と一緒に学園で一緒におらんとに!! きー君と文化祭デートしようとしてるでしょ!!」


 花音は何を言っているんだ……。男同士でデートも何もないだろ。



「デートじゃないぞ。ただ折角見るなら一緒に見ようと思っただけだ」

「むー、そんなこといって、絶対お兄ちゃんきー君のこと、気に入っているから!! 私の方がきー君と仲良しなの!!」



 そんな謎な言い争いを二人がし始めたので、俺は一先ず二人を放置して昼ご飯の準備をすることにした。


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