漫画とカレー

「わぁああ、きー君、1巻から面白いですよ!!」

「おう……。花音が読み終えたら読むから、大人しく読め」

「はーい」



 カレーの材料を冷蔵庫に入れ、鍋もしまってから、花音は早速漫画を読み始めた。大興奮である。静かに読めないのかと思うが、俺も面白い作品に出会えたら興奮するから気持ちは分からなくもない。

 でもとりあえず俺はまだ読んでいないのだから、ネタバレをしないでくれると助かるんだが。この勢いだと花音はネタバレをしてしまいそうな気がする。




「きー君、1巻読み終えた。はい!!」

「……おう。今すぐ読んだ方がいいのか?」

「はい!! すぐに読んでくれないと、私はネタバレをしてしまいそうです!!」



 花音があまりにも眩しい笑顔でそう言うから、俺もさっそく読み始めることにする。絵はちょっと独特だけど、キャラが立っていて面白い。あとがっつり戦記物だからか、主人公に優しい展開ではない。しょっぱなから辛い展開だ。だけどどんどん、話が展開していって引き込む要素が強い。面白いな。



「――面白いな」

「でしょでしょ!!」



 何故か花音はまるで自分が書いたみたいな勢いで肯定している。よっぽど面白いと思っているのだろう。

 それにしてもこれがアニメ化か。アニメ映えもしそうだし。面白そうだ。



「2巻も面白いですよ、きー君」



 にこにこと微笑む花音と共に、その後、『煉獄戦記』を一気読みした。



「面白かったですねー」

「ああ。まさかあんな展開になるとは。続きも楽しみだ」

「ですねー。凄い楽しみです!! アニメも!! あ、これ本棚並べていいですか?」

「いいけど、花音が払った分も置くのか?」

「はい! どうせ、私、放課後はきー君家にいるし、置いていたほうが読み返しやすいですし」



 花音は自分が支払った分も俺の家に並べる気なようだ。まぁ、花音が俺の家に来なくなったら持ち帰ってもらえばいいだろう。


 ずっと漫画を読んでいたのもあって、すっかり昼時になっていた。



「きー君、カレー作りましょう!!」

「ああ」

「カレーを今すぐに食べたい気持ちになったのです。きー君は米を炊いてください。私は野菜を切ります」

「ああ。分かった」



 花音は漫画を読み終えた後、カレーを食べたくなったらしい。『煉獄戦記』の中でキャラクターたちがカレーを食べていたしな。



 俺が米の準備を終わった頃、花音はまだ野菜を切っていた。俺が米の準備を終わったのを見て、「じゃあ、こっちを切ってください」と花音に言われる。

 それに従って食材を切り終えると、具材を炒める。




「私、たまに焦がしちゃうんですよね!」

「あー、俺もそれはある」

「今日は炒めすぎないように気をつけます」


 そう言いながら花音は楽しそうに炒めている。




「よし、良い感じに炒められました!! 水を入れてください」

「ああ」

「ふふふ、いい感じですよね」


 花音はただカレーを作っているだけだというのに、本当に楽しそうだ。



「じゃあ、次はルーですね」

「ああ」



 花音が「変わってください」というのでその後は俺がカレーを混ぜていた。適度に混ぜないとだしな。

 そしてしばらくして、美味しそうなカレーが出来る。



「美味しそうですね、きー君」

「ああ。そうだな」

「さっそく食べましょう。良い感じにお腹がすいてますから!!」



 俺も丁度お腹がすいていたので、丁度良いタイミングで炊けたご飯の上にカレーを乗せる。

 口に含むと、濃厚なカレーの味が広がって美味しいなと思わず口元が緩む。



「美味しいですね。やっぱりカレーは良いです!!」



 花音はパクパクと口に含んでいき、「おかわりします!」とお替りまでしていた。俺も花音が美味しそうに食べているというのもあって、食が進んでお替りしてしまった。にこにこした表情で食事を取る人が一緒に居ると食が進むよなと思う。



「美味しいですねー。夜もカレー食べましょう!」

「ああ。美味しいな」

「明日の朝ごはんもカレーでいいですね。それか、うちの家にパンがあるので持ってきましょうか。パンをカレーにつけると美味しいですよね」

「そうだな。それも美味しそうだ」



 花音は明日も俺の家で食事をするつもりらしい。明日は普通に学校なのだが……、まぁ、いいか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る