後輩の兄の襲来 4
「は? また負けたし」
「あははっ。お兄ちゃんへただね。普段なんでもそつなくこなすお兄ちゃんがゲーム出来ないってそんな顔してるのおもしろーい」
さて、現在何をしているかと言えば、俺の持っているレースゲームである。キャラクターを使って、車を選んで、レースをする。コース次第では、近道も出来たりする。俺は近道を探すのに楽しさを見出していたりする。
今は凛久さんと花音で競争していたのだが、花音もそこまで上手なわけじゃないが、凛久さんの方がボロボロだった。
確かに花音の言う通り、凛久さんってなんでもできそうなイメージがある。こんな風にゲーム一つで悔しいと感情をあらわにするような人には一見すると見えない。
それは花音にも言えるけど、なんというか近寄らなければそんな風に感情をあらわにするようには見えない。寧ろ花音なんて聖母のようなんて言われていて同じ人間ではないようにさえ思われている。でもこうして目の前で笑いあう花音と凛久さんは人間らしくて、そういう様子を見ているだけで何だか面白くなってしまうものだ。
それにしてもやっぱり花音と凛久さんって兄妹なだけあって似てるなと思う。
「ふふふ、お兄ちゃんより何か出来るって珍しいからなんか嬉しか!!」
「ちょっと悔しいが……俺の妹可愛い。花音が可愛いから俺、負けててもいいや」
「お兄ちゃん、本当、私に甘いよね! ま、私は可愛かけん当たり前やけど」
「本当可愛い。よし、喜一、次は喜一がやれ。俺は見学する」
凛久さんはそういうと俺に対してコントローラーを渡してきた。
なので、花音と一緒にゲームを続けた。コツを教えたりすると花音も凛久さんも少しずつ吸収していっている。こういうゲームはそこまで得意じゃないみたいだが、楽しそうなのを見ていると笑みが零れてしまう。
「喜一はこういうゲーム上手いな」
「結構やってますからね。凛久さんはゲームとかあまりしないんですか?」
「ゲームはそこまでしない。やってスマホゲームぐらいだな」
そんな会話をしていたら、花音が話に入ってきた。
「ふふふ、お兄ちゃんも人の声好きなんですよね」
「声が良いのは聞いてていいからな。俺、花音の声も好きだ」
「あはは、ありがとう。お兄ちゃん。私もお兄ちゃんの声好きよー。ね、お兄ちゃん、きー君の声、凄く良い低音でしょ?」
「……まぁ、悪くはない」
「そんなこといって、やっぱりお兄ちゃん、きー君の事、気に入ってるでしょー」
……凛久さんも人の声が好きらしい。っていうか、凛久さんが俺に対して何だかんだすぐに認めたの声が原因だったりするんだろうか。
兄妹だから声の好みが似ているとかあるんだろうか。それならこの声で良かったなとは思う。
「ねーねー、きー君、お兄ちゃん、次は乙女ゲームかギャルゲーやろうよ。お兄ちゃんがいるならギャルゲーかな。お兄ちゃんなら女の子の扱い得意そうだし」
「いや、流石に現実とゲームじゃ違うだろう。っていうか、花音、それじゃあ俺が女たらしみたいだろ?」
「んーでも、お兄ちゃんって女の子に嫌な思いをさせずにどうにかするのって得意じゃん。お兄ちゃんって外だと王子様みたいだし。なんか乙女ゲームとかにいそうだなってずっと思ってるんだけど」
「花音に王子様って言われるのはなんかいいな。この場合、お姫様は花音かな?」
「……お兄ちゃんは自分のお姫様見つけなよー。妹にデレデレより、自分だけのお姫様にデレデレな感じのお兄ちゃんみたいなー」
花音は凛久さんが妹にデレデレするよりも誰か特別な人を作ってほしいと思っているようだ。それにしてもこの兄妹、本当に仲が良い。
「いや、今の所そういうのはいないな。花音の方が誰よりも可愛いしー」
「もー。私が可愛いのは当然だけど、もっと他に目を向けようよー」
花音は確かに可愛いから凛久さんの理想が花音だと、恋人を探すのも大変そうだ。
それからしばらく三人で会話をしたり、遊んだりした。
夕方になるころには凛久さんは俺の家にすっかりなじんでいた。花音と言い、適応能力高いなと思う。
「お兄ちゃん、いつ帰るの?」
「花音! 家に泊めてくれ。明日もいる!」
「え。お兄ちゃん、明日もいるの?」
「駄目か?」
「私はいいけど、きー君は?」
花音は日曜日の明日も俺の家に来る気満々なようで、俺に問いかけてくる。
「俺は構わない」
「よし、じゃあ明日も来る。花音泊めて」
「うん。っていうかさ、お兄ちゃんいるなら三人でお泊りしようよ! このきー君家でさ。お兄ちゃんいるなら私が泊まっても問題ないだろうし!!」
何故か花音は俺の家で三人で泊まりたいらしい。急に言われて俺は驚く。
「花音? 流石に男の家に泊るのは……」
「お兄ちゃんがいるから大丈夫だって。前に泊まった事あるし」
「ちょっと待て、花音、それはどういう――」
そんなこんなで花音と凛久さんが会話を交わし、花音が凛久さんを説得させたのか、
「お世話になる。喜一」
「お世話になります。きー君」
と二人して笑い、二人とも俺の家に泊ることになったのだった。
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