二学期初めての週末
「上林先輩、乙女ゲームどうでした?」
「楽しかった。結構人は死ぬが、色んなストーリーがあって結構楽しめるな」
「ですよねー。じゃあ、次は他の乙女ゲームをもってきますね」
「ああ」
二学期が始まって既に五日ほど経過している。今日は二学期が始まって初めての週末である。
平日も天道は俺の家に入り浸っていた。飽きもせずに俺に台詞を言わせ、ゲームを進め、共に過ごす。天道と共にのんびりとするのも日常と化してきていると言えるだろう。まだひと月も経っていないというのに、俺の日常に天道が入り込んでいる。
天道が俺に進めていた乙女ゲームは全てのルートをクリアしてしまった。ゲームを始めた時はこんなに全部のルートをやるほふどはまるとは思わなかったんだが、やってみたら面白かった。あと天道が全部のルートやってほしいって目で見てきたからもあるけど。
土曜日、朝から俺の部屋にやってきた天道はソファで寝転がりながら漫画を読んでいる。昨日、買った新刊らしい。
嬉しそうに声を挙げながら読み進めている様子は楽しそうだ。
「そんなに楽しいのか?」
「はい!! 執事とお嬢様ものの恋愛漫画なんですけど、凄く楽しいんですよ。よかったら上林先輩も読みませんか?」
「男でも楽しめるか?」
「はい。女性向けですけど、男性でも楽しいと思いますよ。私はキュンキュンきちゃいます!! というか、よければはまって台詞読んでもらえると嬉しいですっ」
「……構わない」
「ふふ、じゃあ持ってきますね」
そんな会話を交わしていたら、天道のスマホが連絡を知らせる音が鳴った。何度もピコンピコンと鳴った。
何度も音が鳴って、天道は漫画を一度置いて、スマホを見る。
そして「あ」と口にする。
「どうした?」
「えーと、上林先輩、ごめんなさい」
「どうしたんだ?」
「えっとですね。お兄ちゃんに私が上林先輩の家に入り浸っているのを知られてしまったみたいです」
「あー……」
そう言えば、母親は知っているけれど父親と兄は知らないかもって言ってたっけ。知らなかったってことなんだろう。
それで何で俺に謝っているのかは分からないで、じっと天道を見る。そしたら天道は言いにくそうにいった。
「なんていうか、お兄ちゃんって心配性なんですね。私の事、凄く可愛がってくれていて、私にとって自慢のお兄ちゃんで、大好きなんですけど……ただちょっと問題な部分があって凄く過保護なんですよね。私が可愛いからなんですけど」
「あー……それは分かる」
「それでですね。お兄ちゃん、私が上林先輩の部屋に入り浸っているの知ってやってくるって」
「え、今からか?」
「そう。今からくるそうです……ごめんなさい、上林先輩」
「いや、構わないが……、結構近いのか?」
「一時間もかからないぐらいの所に一人暮らししているので、昼前には来るんじゃないでしょうか……」
俺はそれを聞いて時計をちらりと見る。確かに一時間ぐらいだと、昼ぐらいだな。となると、天道の兄の分の昼食も用意するべきか?
そう思って問いかければ、「あー、お兄ちゃん多分何も考えずにいても経ってもいられなくてやってくると思うんで……、食べてこないと思います」と言われた。天道と似ていて、結構思い付きで行動するのかもしれない。似た者同士の兄妹なのだろうか。
「じゃあ、俺ちょっと買い物してくる。足りないかもだし、多めに」
「え、じゃあ私が行きますよ? 私のお兄ちゃんが来るからですし」
「いや、構わない。天道は漫画の続きを読みたいんだろ? 俺が行くからいい」
「じゃあ、お言葉に甘えて……私、お留守番してますね!!」
「ああ。来客者はいないと思うが……、変な来客は出ないようにな」
「はーい」
天道の元気な返事を聞きながら俺は一人スーパーに向かった。天道の兄が何を好きか聞いてないが、まぁ、適当に色々買っておけばいいだろう。今日の昼食用に準備していたものは夕飯に天道と食べればいいだろうし。
天道の兄がどれだけ家にいるのか分からないが、多めに買っておいて損はないだろう。どうせ、明日も天道は俺の部屋にいるだろうし。
……なんか当たり前みたいに天道が来るの当然って思っているのに漠然とするが、用事があるとも言っていなかったので来るだろう。
俺はスーパーにいって、適当に色んなものを買い込んだ。結構な重さなので天道に行ってもらわなくて良かったと思う。流石にこんな重いのを年下の女の子に持たせるのは忍びないし。
アイスとかお菓子も買ってしまった。
天道の兄もお菓子とか好きだろうか? まぁ、好きじゃなくても俺と天道で食べるから良いが。
そんなことを考えながらマンションに戻った。
まだ天道の兄は来ていなかったので、天道の兄が来るまで簡単に掃除などをすることにした。
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