友人と後輩の初対面
「こんにちは! 上林先輩のご友人の永沢先輩ですよね。私は天道花音です。よろしくお願いします!!」
「ああ。よろしく。天道さん。俺の名前、知ってたんですね」
「上林先輩がどんな人かって調べた時に永沢先輩のことも知りましたからね。上林先輩が一番仲よくしている友人さんでしょう? あと、私にはもっと砕けた口調で構いませんよ。私の方が年下ですし」
……俺の声が好みだ! ってなった後に俺について調べたって言ってたもんな。でもそれでゆうきのことまで詳しくなってるってどんだけ情報収集能力が高いのだろうか。
情報収集ってどれだけ俺の情報集めたんだろうか。なんか深い所まで知ってそうで怖いから詳しく聞くのはやめておこうと思った。
ゆうきの前でも天道はいつも通り元気だった。俺の友人だからかもしれないが、いきなり素を出していてゆうきが大分驚いた顔をしている。ゆうきからしてみれば、普段の天道とのギャップが激しすぎて混乱してしまっているのだろう。よく分かる。俺だって天道のこんな様子に最初は戸惑った。
「あ、ああ」
「昼食に美味しいパン屋さんのパンを色々買ってきたんですよ。三人で食べましょう! あ、飲み物はどうしますか? 何かついできますね」
にこにこと笑って天道は、勝手知ったる顔ですたすたと冷蔵庫の方へと向かった。
「て、天道さん、凄く学園と違うな」
「ああ。こっちが素らしい」
「そうか。びっくりしたが、楽しそうな天道さんもいいな」
ゆうきはそう言って笑った。
天道が「お茶がいいですかー? 牛乳がいいですかー?」に返事をしながら、俺たちは袋からパンを取り出す。メロンパン、クロワッサン、カレーパンやシナモンロールやエッグパンなど様々なパンが入っていた。結構な量だ。こんなに食べられるだろうかと少しだけ不安を感じた。
天道はマグカップに飲み物をついで、機嫌よさそうに戻ってきた。
「はい、どーぞ」
「ありがとう、天道」
「ありがとう、天道さん」
ソファに天道、俺、ゆうきと並んで食べることになった。
「上林先輩と永沢先輩はどれを食べますか?」
「俺はどれでもいいから先に天道が好きなのを選んでもいいぞ」
「ああ。俺も天道さんが選んだあとでいい」
「そうですか? じゃあお言葉に甘えて!! どれにしようかなぁ。どれも美味しそうだからなぁ」
天道は俺とゆうきの言葉に笑ったかと思えば、真剣な表情になってどのパンを食べるか選び始めた。本当にころころと表情が変わって、見ていて面白い。
「じゃあ、このクロワッサンとジャムパンとメロンパンもらいます!!」
「ああ。ゆうきが先に選んでいいぞ」
「じゃあ俺は――」
そう言ってゆうきが選んだ後に。残ったパンを俺がもらうことにした。
まずは、エッグパン。柔らかい触感が口の中に広がって美味しい。天道が美味しいと言うのもうなずける。
「はぁ、やっぱり此処のパンは美味しい。上林先輩と永沢先輩はどうですか? 美味しいですか?」
「うまい」
「美味しいよ、天道さん」
俺たちがそう答えれば、天道は花が咲くような笑みを浮かべた。
「天道さんが喜一と仲よくしているって聞いて驚いたよ」
「私が上林先輩の声を気に入ったから押し掛けてるんですよ」
「喜一の声は良い声だもんなぁ」
「ですよね! 低音が良い感じに心地よくて、聞いているだけではぁーってなる感じですよ。初めて聞いた時に凄い良い声ってなったんですよ!! 私の本当好みの声なんです」
「あ、ああ」
ゆうきが押されている。ここまで勢いよく天道が語りだすとは思わなかったんだろう。
「天道、落ち着け」
「はっ、すみません。いきなり勢いよく話してしまって!!」
「気にしなくていい。それにしても本当に天道さんは喜一の声が好きなんだなぁ」
少しからかうようにゆうきは俺の方を見た。
「はい!! とっても好みの声なんですよ」
「そうか。喜一は良い奴だろ?」
「はい!! とっても良い先輩です。私って結構我儘なことを言っている気がしますけど、喜一先輩って優しくて、私の事を凄く甘やかしているんですよ! 私はとても楽しいです」
「そうか。ははっ、喜一は結構面倒見が良いもんな」
「はい! とっても面倒を見てもらってますよ」
天道とゆうきが話している間に、俺は黙々とパンを食べていた。なんか、自分の話をそんな風に隣でされてもちょっと恥ずかしかったのだ。
「上林先輩、黙ってどうしました? もしかして恥ずかしがってます? ふふ、上林先輩は恥ずかしがり屋さんですね! でも私がすごく上林先輩に甘やかされて楽しく過ごして、上林先輩と一緒に過ごすのとっても好きだなーってなってますよ」
俺が恥ずかしがっているのに気付いた天道はパンを食べている俺の顔を覗きこんで、追い打ちをかけてきた。
「……はいはい。俺も天道と遊べるのは楽しいよ」
「ふふふ、私も上林先輩も楽しいって両想いですね! 良い事です!!」
天道は心の底から楽しそうに笑っていた。
「本当に仲が良くていいなぁ」
そしてそんな俺と天道を見て、ゆうきも笑うのだった。
それからパンを食べ終わった後、「じゃあ俺は帰るから、二人とも仲良くな」とゆうきは言って帰っていった。
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