ギャルゲーを進める俺と、くつろぐ後輩

  朝食を取り終わった後、俺と天道が何をしているかと言えば、俺はギャルゲーの続きをし、天道はくつろいでいた。



 昨日と同じように天道はソファに寝転がって漫画を読んでいる。朝食の時に話していた続編を読みながら興奮しているのかちょくちょく何か声を挙げている。

 昨日は漫画を読みながらこんなに声をあげていなかった気がするので昨日は我慢していたのかもしれない。



「○○様、かっこいい!!」



 などといった天道の楽しそうな声を聞きながら俺はギャルゲーをしていた。それにしてもギャルゲーは今までやったことがなかったが、いざやってみると結構楽しいものだ。

 色々と奥深い部分もあるし、これなら十分やりこんで楽しむことが出来る。

 天道と話し始めなければギャルゲーがこんなに楽しいなんて分からなかっただろう。

 今日は昨日攻略で出来なかったルートを攻略してしまおうと俺はテレビ画面に向かっていた。




「上林先輩がこんなにギャルゲーにはまってくれるなんて本当に嬉しい誤算です。それを全て攻略し終わったら乙女ゲームも持ってきますね」



 天道は一心にゲームをする俺を見ながらにこにこと笑っている。天道が好きなギャルゲーに俺がはまっていることが嬉しいらしい。



「好きなものを共有出来るってとても良い事ですよねー。ギャルゲーの話とか学園の人たちと出来ないからなんだか嬉しいです」

「その性格出せばいいんじゃないか? ギャルゲーしている学生も普通にいるだろうし」

「んー、なんていうか下手に親しみやすい印象持たれたりすると大変なんですよ? 私可愛いから変な勘違いされたりとか、異性と仲よくしていたら他の女の子に嫌がられたりとかもいろいろあるんですよー。私はどちらかというと浅くて広い関係より、深くて狭い関係の方が好きですしね。なので上林先輩が私の好きなギャルゲーにはまってくれて私は嬉しい限りなのですよ!!」

「そうか。美少女なのも大変だな」

「ふふ、上林先輩も私のことを美少女っていうんですねー。可愛いと得な面もありますけど、大変な面もそれなりにあるんですよ。私の家、両親やお兄ちゃんも異性にもてるほうで結構色々大変な目遭ってたみたいで、お兄ちゃん何て自意識過剰なぐらい異性の事は警戒したほうがいいんだぞーってずっと言ってますしね。だから結構私は警戒心強い方なんですよ?」

「警戒心強いのは自分を守るために必要だし良いと思うが……、天道は警戒心ないだろ。話し始めて四日の男の家で無防備寝たりしてたし」

「上林先輩なら大丈夫ってのがあるからですよ!! 他の人の家でこんなくつろぎませんって。そもそもですね。最初ここに越した後に同じ学園の男の人が隣の家って知ってちょっと警戒してたんですよ。なんか関わろうとしてくるかなーとか。上林先輩私が隣の家にいるって知っても寧ろ関わらないようにしてましたしね。そういう所も含めてですよ」



 天道は無邪気にそんな発言をする。いや、本当に警戒心はないとしか思えない。幾ら自分が大丈夫だと思っても危険な目に遭う時はあうだろうしとこの隣の後輩が心配になる。

 それにしても天道の両親や兄も美形なのか。異性にモテモテの一家。天道一人いるだけでもこれだけ目立つのだから家族がそろったらさぞ壮観なのだろうななどと思う。




「隣ってだけでそんなするやついるか?」

「いますよー。お兄ちゃんは去年から一人暮らししているんですけど、隣に住んでいる年上の女性が『ご飯作ってあげようか?』とか、『ついでに私のこともおいしく――』とか危ない発言して迫ってきたって言ってましたもん。お兄ちゃんが少し愛想よくしたらそんな感じになっちゃったらしくて、結局お兄ちゃんへのストーカー行為で引っ越していったらしいですけど」

「マジか……」



 そんなことが現実にあるものなのかと、ギャルゲーをしながら驚く。



「そうですよ。しかも部屋の前に居座ったり、ベランダに乗り込んできたりとか凄かったらしいってお兄ちゃんが。滅多にそんな人いないだろうけど、世の中にはそういう人もいるから気をつけなさいよってお母さんも言ってました」

「なんかトラウマになりそうだなぁ……」

「お兄ちゃん、中高生の頃に髪とか入ったチョコもらったりもしてたから割と女嫌いだったりするんですよね。私やお母さんには優しいんですけど」

「うわぁ……髪入りか」

「そうですよ。好きな人が自分を好きになるおまじない的な奴とか女の子好きじゃないですか。それでそういうことしちゃったらしくて。私は是非とも義理のお姉さんとかほしいんですけどねー」




 美形は美形で大変な苦労があるんだなと感じる。お姉さんが欲しいらしいが、天道の兄は妹が第一で、基本的に女嫌いで義理の姉が出来る気配はないらしい。

 




 ギャルゲーをする俺に、天道は時折話しかけながらスマホをしたり漫画を読んだりくつろいでいた。そうしているうちにすっかり昼になった。

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