高校生は春夏秋冬
えびチーズ
第1話『春の桜』
一年が、始まろうとしている。
新しい日々が、始まろうとしている。
──明日から高校二年生になるのを控えている私、
ちょうど去年の1年生の頃に、純くんの優しさや思いやりに心打たれ、ずっと恋をしていた。
でも、純くんはかなりの人気で、私なんかが告白しても良いのだろうか、と、日々悩んでいたんだけど。
それも、今日で終わりにしようと思う。
何回も話しかけて、親交を深めたあの日。
何回も二人で出掛けて、デート気分で街を歩いたあの日。
何回も期待しては落ち込み、そんな一喜一憂を過ごしながらも、それでも諦めない、と心に誓ったあの日々。
ベッドで寝転がって明るい天井を見ていた私は、側に置いてあったスマホを手に取り、トークアプリを立ち上げる。
そして彼のトーク画面を、ドキドキからなのか、素直にタップせず、長押しで彼のトーク画面を開く。
そして一瞬だけ息を止め、素早く文を打ち込む。
『ずっと前から、好きでした』
ストレート過ぎないか、と意味のない心配をしながら、全文を消して、また打ち直す。
『純の事が、ずっと前から、好きだったぜ』
いやダメだこれ。こんな男勝りな文は期待してはいないはず。
時刻は、もう11時が終わる頃、11時59分だった。
ええい、もう!
こう言う時は、分かりやすくストレートに!
しない後悔よりする後悔! 送っちゃえ!
そして、私が送った文は、
『好きでした。付き合ってくだ』
まさかのミス!
あ、あ、これ、駄目だ。も、もう消そうか、これ。うん。
そう思いながら自分の送った文を長押しして『送信取消』のボタンを押そうとした瞬間──
0:00既読。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ! 終わった、終わったよ! 私、明日学校いけなくなるかも! ねぇ助けて! 助けてぬいぐるみぃぃぃぃぃぃぃ!」
と、訳のわからない命乞いをすること数秒。
ピロン、と、小さな着信音が、バタバタしていた私からでも、十分聞こえてきた。
「き、来た!」
私はドキドキしながら、その着信音が彼の返事だと分かったところで、先程のトーク画面を、途中で押そうとした指を止めたり、進めたりしながら、トーク画面を開く。
そして、そこに打たれていた、ストレートな彼への返答を見て、
「─────ッ! ──────ッ!」
喜びを噛み締めながら、ベッドの上でのたうち回った。
少し落ち着こう、と、夜空を見るため窓を
「おめでとう」
とでも言うように、昨日まではつぼみだった桜の木が、満開になっていた。
「うわぁ、綺麗!」
その春の桜は、月明かりに照らされていて、何だか、とても美しかった。
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