同級生は変わらない
「ははははぁっ!!空ぁ!!やっぱテメェサイコーにバケモンだな!!」
「手加減してくんねぇかなぁ…!?俺サークルにも部活にも入って無いんだぞ!?」
アキラとの一対一では、俺がボールをキープし続けられるが、気を抜いたら一瞬で持ってかれるレベルにまでなっていた。
今の…いや、努力の天才であるアキラは、恐らく国内最強のディフェンダーだろう。
だけども、こちらとしてもプライドというものはある。0の状態から一気にトップまで引き上げてサイド側に向かってドリブル。だが当然のように付いてくるアキラ。
それをエラシコで交わすと見せかけ、アキラに一度背中を向け、ヒールで股を倒す。
「っ!」
「っし」
股を通せばこっちのものだ。アキラはディフェンスでは国内最強だろうが、スピードはそうでも無い。いやまぁ、全国常連の陸上部の奴と勝負して勝利するくらいには足が速いけど。
だがまぁ…俺の敵じゃない。
「くっそ…!!」
ボールを再び持った俺がやるのは、それをゴールに叩き込むだけだ。一際小さいゴールの中にボールが吸い込まれ、俺は無事勝利を収める。
「ふぅ…」
「クッソがあぁあぁあああ!!!また負けたぁ!おい空!もっかいだ!もっかいやれ!!」
「もう既に十回以上やってんじゃねぇか…飽きないなお前」
「るっせぇ!!それ全部負けてんだから当然だろうが!!」
だが何度も何度も冷や汗をかくレベルで、アキラは成長していた。高校の時もそうだったが、今もこのサッカーバカは変わらない様だ。
「おーいアキラ、それでも少し辞めといたらどうだ?隼也とかももう来てるらしいからよ」
紅蓮が呆れながらそれを言う。というかお前隼也と面識あったんだな。と思う。
「チッ…なら空!明日の朝もっかいやれ!」
「はいはい…」
紅蓮は毎日こんなのに付き合わされてんのか…と思うと、かなり同情する。今度バイト代で何か奢ってやろうかな。
………
……
…
「ひっさしぶりだなぁ空!!」
会場であるレストランに到着すると、隼也が俺の手を取ってブンブンと振り回し始める。
相変わらずだなと感じながら、言葉を出す。
「おう、久々だな。まぁ半年程度だけど」
「細けぇことは良いんだよ!アリスちゃんも久々だね」
ニッコリと笑ってアリスに言う。隼也以外なら口説いてる様に見えるが、コイツは割とマジな方の天然なので特に咎めることは無い。
「うん、久しぶり。椎名ちゃんは?」
「椎名なら今トイレだ。もうそろそろ…」
「ひゃっ!!」
アリスが可愛らしい悲鳴を上げる。その懐には、椎名が存在しており、アリスの胸を揉みしだく。
「ほほぉ、アリス、アンタ結構胸膨らんだわね…。これは、空と頑張ってるお陰かな?」
「も、もう〜!椎名ちゃん!こんな場所でそれを言わないでよ〜!」
墓穴を掘りやがった。いやまぁ…夜頑張ってるのは間違いないが、それを確信させることはなかったんじゃ無いだろうか。紅蓮と隼也が俺の頬を人差し指でグリグリと押す。
「ヘイヘイ空君よぉ、大学生ってのは良い御身分だねぇ」
「毎晩毎晩お楽しみなんでしょうねぇ」
「う、うるっせぇ!!流石に毎晩はしてねぇよ!」
毎晩は…流石にしてない。でも…うん…それに近い形なのは…認めるしかないけど。
………
……
…
俺、隼也、アキラ、紅蓮、椎名、アリスによる、小規模な同窓会は、どんどんヒートアップしていく。いやまぁ、俺らまだ18だから酒は飲めないんだけどね?
それでも雰囲気酔いという奴だ。
「ヘイヘイ空君にアリスちゃんよぉ、お前ら結婚とか考えてるんか?」
ぶふっ!!とお互い飲んでいたジュースと水を吹き出してしまう…のをなんとか堪えて喉に流し込むが、むせて咳き込んでしまう。
「ゲホッ!ゲホッ!な、何言ってんだよ隼也。まだそんな歳じゃねぇだろ…」
「いやでもよぉ、18から結婚は出来るだろ?」
「そうだけどさ…早すぎるだろ。せ、せめて大学卒業してか…はっ」
ニヤニヤしている隼也と紅蓮と、顔を真っ赤にしてるアリス。
「あ、アリス!ち、違うぞ…!?あ、いや…違ってはないけどさ…」
「だ、だだだ、大丈夫だよ空!け、結婚式場はどこにする!?」
「おぃぃ!?どこが大丈夫なんだ!?」
ヤッベェよなんだこれ!!最早収集つかないんだけど!?
「けっけっけ、微笑ましいですなぁ紅蓮さんや」
「あぁ、空があんな自分をさらけ出すのは、アイツくらいだろうな…」
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