空君が媚薬を呑んだ場合
キッチンには朝ごはんを作るアリス。そして机でそれを待つ俺。ここだけ見れば夫婦の様に見えるだろうが、最近はそんな事を言われても動揺しなくなってきたこの時期。俺は…少しだけマズイ状況に立たされていた。
それは、アリスとの破局の危機
などではなく。
(なんだろう…アリスをすげぇ抱きしめたい)
何故か俺は発情していた。おい待て。まずはその通報しようとする手を止めようか。
(なんかアリス…最近可愛くなってね?)
そう思うのは俺の気のせいだろうか。高校の時の天真爛漫という四字熟語が似合いそうなアリスだったが、今は何というか、妖艶?というべき魅力がついたような気がする。
その理由は何だろうと少し考えていると、背後から柔らかい感触が伝わってくる。
「ねぇねぇ空〜。どうしたの?」
「えぁ…あ、いや…なんでもない…」
少しだけよそよそしくしながら俺はアリスを引き剥がす。それに少しだけ怒った様な顔を浮かべたが、直ぐに収めてキッチンに戻った。
………
……
…
「はぁ…はぁ…なんだ…これ…」
明らかにおかしい。おかしい、おかしすぎる。顔は赤く染まり、体は熱があるんじゃないかと思う程火照っていた。
そんな状態で大学の講義が終わり、今日はバイトもないので家に直行した。
玄関の扉は開いており、ゆっくりと扉を開く。玄関にはアリスの靴があり、いい匂いが漂っていた。
「はぁ…腹減ったぁ。アリス、今日の晩飯は唐揚げ…か?」
リビングの扉を開くと、2つあるサラダのうち、1つの中にとある薬物を混ぜ込んでいるアリスの姿。その薬物が何なのかは直ぐに理解した。
「へぇぇぇ…『男にメッチャ効く媚薬!!』ねぇ。そうかぁ、この症状はお前の仕業かぁアリスさんよぉ!」
「あ、か、かか、帰って…来てたんだ…」
顔は真っ青になり、徐々に近づく俺を避ける様に後ろに下がっていく。
だが部屋の中では限界が来る。アリスは冷蔵庫に背中を当てて、「あ」と声を漏らした瞬間アリスの横顔を通り過ぎる様に右手で冷蔵庫を叩く。所謂壁ドンだが、今のアリスには恐怖しか感じないだろう。
「俺のこれがで始めたのは朝だ。ってこたぁ昨日の晩飯に盛りやがったな?」
「は、はい…」
「他には?」
「ち、朝食と…お昼ご飯に…」
よく見てみればキッチンにはさっきアリスの使いかけ一本と、二本の空の薬があった。
「動機は?」
「はい…空が最近イケメン化が進んで来てるような気がするんで、空を欲情させて…と思いまして」
成る程ぉ。媚薬なしでもアリスの事を可愛いとは思ってる。そしてアリスもそれは同様だったようだ。
「ったく…んな事媚薬に頼るなよ」
「う、うん…ごめんなさい。もうやらない…」
スカートをぎゅっ、と握りしめて俯くアリスは、まるで小動物のような可愛さを連想した。
そしてまぁ、媚薬を盛られた俺がどうなったのかは、想像にお任せするとしよう。
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