【完結】10年ぶりに再会した幼馴染が、デレデレに懐いてきます

スライム

再会

「ん…んん」


 ピピピピッ!!と煩い目覚ましの音に苛立ちを覚えながら、その音を発信する時計の目覚ましを切って、ベットから起き上がる。


「ふぁ…ああああ」


 俺の名前は黒川空。何処にでも居る様な高校3年生、17歳だ。


「ねむ…」


 もう一回二度寝しようとするが、これ以上寝たら本気で起きれなくなるので辞めてベットから降り、クローゼットを開けて制服に着替えて下に降りる。


「おはよ、ほら、さっさと食べちゃいなさい」


 母さんからそんな声を貰い、椅子に座ってパンを齧る。


「アレ?母さんなんか浮かれてね?」


「ふふっ…そりゃあね」


 なんか良いことでもあったんだろうか。よく分からないが、少し気になる。


「何があるんだよ…」


「ふふっ、それは秘密。だけど空にとってすっごく驚くことよ?」


「驚く?」


「そ。ってやば!!遅刻する!とっとと食べて学校行きなさいよ!?」


「わぁってるよ」


………

……


「なぁ知ってるか空、今日転校生来るらしいぜ?」


 学校行った途端、俺の友人である河原隼也からそう告げられる。俺は席に座って、それについて近くのメンバーで喋る。


「マジで?どんな子?」


「噂によれば、すっっっっげぇ可愛い帰国子女なんだと。アメリカの方で何度もモデル誘われるくらいの可愛さで、スタイル抜群の完璧超人」


「噂に尾ひれどころか背びれと手足までついてんじゃねぇか。んな人間として完璧な奴なんていてたまるか」


 そんな訳ありえないと、俺は否定する。


「わぁってるよ!だけど、夢膨らむだろ!?もし、もしそんな子が居て…色々教えたりして……むふふ」


「何想像してんだよ…」


 呆れた目線が降り注ぐと、隼也はゴホンッ!と喉の調子を整えた。


「まぁ、このクラスに女子の転校生が来ることは確定らしいからさ、可愛いか可愛くないか、賭けようぜ」


 そんな最低な事を言い残して、隼也は自分の席に戻っていく。それと同時にチャイムが鳴り響き、教室の外から先生が入ってくる。


「おーしお前らぁ、席に付けよ〜」


 年齢は40代ほどのおっさん、影山正一。その運動神経と持ち前の気前の良さで、結構な男子生徒から人気を得ている人物だ。因みに愛称でショウちゃんとも呼ばれてる。


「なぁショウちゃん!!今日転校生来るってマジ!?」


 早速隼也が質問をすると、少し驚いた様な顔をしてニヤリと笑った。


「情報早いな。そうだ、今日は転校生が来る。しかも女子…惚れそうになるくらい可愛かった」


『うおおおおおおおおおっ!!!』


 クラスの男子供から歓声が上がる。俺?俺もちょっと嬉しいよ。だけどそんな大声出すのって苦手だから出さないけどね?


「マジかよ!!どんな子!?どんな子!?」


「それはまぁ、見てからのお楽しみって奴だ。っつうわけで、ハードル結構高くなったが、入ってきてくれ」


 こんなバカ高いハードル、並みの生徒じゃ乗り切れないだろうが、入ってきた生徒は並みどころか絶世の美女。金色の髪をたなびかせ、くりっとした茶色い瞳は幼さを感じさせるものだった。


(アレ…なんか…)


 少し、とある人物と重なる。俺が7歳の頃、金色の異質な髪を持った少女が居た。小学生の頃、男子はそれが気に入らなかったから少女を虐めた。

 まぁそんとき、正義感が少しはあった俺は勇気を振り絞って少女を助けた。するとまぁ結構仲良くなった。んでその数ヶ月後、海外転勤によって離れ離れになって、おしまい。アレから10年も経ってる。まさかアイツがあの少女ってわけでもねぇだろうし。


「んじゃ、挨拶お願いね?」


「はい、私の名前は、アリス=クロネストです。10年間、アメリカにいたので……日本語少し苦手ですが……よろしくお願いします」


「ぶふっ!」


 その静寂の空気の中、俺は思わず吹き出した。理由?それはね、さっき説明した少女の名前と完全に合致してたんだよ。


(え!?嘘だろ!?まさかアイツがアリス!?嘘だろ!?いやいやいやいや!アリスはあんなナイスバディじゃない!!)


思考を巡らせていると、コツンッ、と俺の額を小突かれる。


「いて…うぉ…」


目の前に居るアリスは、以前の笑顔のアリスの面影は一切無い。冷徹で、氷結の女王と呼ばれそうな程冷ややかな目を送っている…と思えば。


「…やっぱり空だああああああっ!!」


「……へ?うぼぉっ!!」


そして、思いっきり抱きつかれた。

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