海ほたると私たち
田中真矢
第1話 帰る場所そこは”海ほたる”
焼け付く太陽の下、果てのない大海原を進む一隻の船
宛てもなく大海原をさまよい、時には進路を変え何かを探すその船に
私は乗船している
私がこの船にお世話になってもう半年
最初は船酔いが酷かったけど、それは段々と慣れていった
だけどいまだに慣れない事がある
それはたまに感じる死臭だ・・・・
半年前のあの日から何度も感じるこの臭い
船頭である親父さんはもうとっくに慣れたって言ってたけど、私はいまだに慣れる気がしない・・・
「日も落ちて来た!!
おう、お前ら!今日はここらで海ほたるに戻るぞ!」
そう親父さんが号令をすると、船員の1人が錨を上げ始める
もう1人の船員である私は空に閃光弾を放ち
近くにいる船へ撤退の合図を送る
しばらく待っていると
その閃光弾の合図に反応した船達から閃光弾が上がる
私はその閃光弾の数を数え、親父さんその様子を伝える
「1,2,3,4つの閃光弾を確認
親父さん、みんな大丈夫そうだよ!」
「おう!!そんじゃいくぞ!!」
親父さんがそう言うと
私たちの乗っている船がぐんぐんと進み始める
目的地はそう、私たちの生活拠点である洋上居住地"海ほたる"
半年前までの"海ほたる"は、東京湾を跨ぐ海上高速道路のパーキングエリアだった
けれど、半年前に起きた世界変動規模の大震災
それとともに起こった地殻変動
そして沈んでいった関東平野
船などで避難できた人々がたどり着いた場所
それが私たちの"海ほたる"だ
大震災の影響で左右に伸びる道路は途中で崩れてしまっているが
パーキングエリア部分は損傷が少なく、比較的安全だと考えられ
避難場所に適してるってたまたま居合わせた専門家の学者さんが判断して
その情報をしった人々が集って、いまのコミュニティが出来ている
みんな一時的な避難で
国が自衛隊などを指揮して救助に来てくれると信じていた
私もそうだった
それからもう半年・・・
救助は来ない
通信機器はほとんど使えない
情報がないため、大震災の規模が分からず
限られた燃料で陸を目指そうにもどこに行けばよいのやら・・・
問題は山積みだ・・・
食料に至っては深刻で
最初は救助が来るまでの間と
海ほたるのショップなどにあった商品や災害時用備蓄食糧で耐えしのいでいた
けど、それもほぼ底をついている
ただ、サバイバル指導を仕事にしていた人が初期の頃から始めていた
自給自足プロジェクト
それのおかげで何とか今日までみんな生きてこれている
それが私たちの海ほたるの現実だ
海ほたると私たち 田中真矢 @tnkmy
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