3. 第1話 3部目 何もかも不足してます

ウェルスは、過疎化が進みに進んでしまった為、ありとあらゆるものが不足している。

まずは人材。次に食料問題。そのまた次に、技術。

これら3つは切っても切り離せない問題である。

働ける人間が少ないから、食糧確保が難しい。

その上、食料を確保するための技術や経験が乏しいため、

全家庭の主食が村で唯一育てている麦になってしまっている。

それも1年に1度の収穫で、村人全員が1年間食べられるだけの非常に少ない量しか収穫出来ない。

原因は、畑を荒らす害虫の存在や単純な管理不足によるもの。

害虫が発生したら、見つけ次第追い払うか、好きなだけ喰わせるかの二択しかなく、

害虫に目をつけられる前に手を打つ方法がない。

こういう事態を回避するために、農薬を作物に振りかけ虫除けをするものなのだが、

この世界において殺虫剤や農薬は高級品なんだとか…。

その事実にも驚くが、聞けば聞くほど、言えば言うほど…この村は何とも頼りない。

よく今まで、数人だけでも生き延びたものだと逆に感心してしまうほどだ。

肉も食えない状況で、生き延びた彼らは運が良かったとしか言いようがない。

…そう、この村では畜産もしていない。

村人たちだけで食っていくのに精一杯なのに、畜産なんてもってのほかだろうと言う意見は最もだが、

村の周りには森が広がっており、野生動物も数多く生息していると言うではないか。

ならば、動物を狩りに出かける事だって出来る筈だ。

しかし、ここでまた問題が発生する。

狩りをするための道具と技術がない。

今の僕の父は狩り具さえあれば狩りが出来ると言っていたが、

肝心の狩り具がない上、作る事も出来ないらしい。

村には作り手がおらず、町で狩り具を買おうものなら値段が高くて手が出せない。

程々の木材と工具があれば、弓矢くらいなら作れると思うのだが…。

それすらも集められないため、手詰まってしまっている。

しかし、このままでは村人が全滅したとしても可笑しくはない。

前世で過ごした日本の方が馴染深いとは言え、ウェルスも生まれ故郷に変わりはない。

その生まれ故郷に何も返す事なく、無くなってしまうのは余りにも悲しい。

村人たちから神子とまで呼ばれるからには、その期待に少しでも応えなければ日本男児としては情けないではないか。

それに、転生したこと自体に何か意味があるのかもしれない。

それを確かめる為にも、先ずは生きていく環境を整える必要があるのだ。

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