第12話
何事もなく平和な1週間を経て、サヤと会う日が来た。いつからか僕はサヤと会うことに喜びを感じ始めた。そう思いながら頼まれていた1〜4巻を持ってベンチへ向かった。座って、ノートを開く。日曜日丸一日と平日の夜を使ったおかげであの作品は進んでいた。ただ大きなモヤモヤだけが残っていたので、今日はなんとしても質問をしようと思った。
『わあ〜結構進んだね〜』サヤの声がした。気がつくと片手に漫画を持っていた。いつの間に。
『まあ、肝心なとこがまだ書けてないけどね。質問、してもいい?』僕がそう聞くと、サヤは少し顔を曇らせたがすぐに笑顔に戻り、大きく頷いた。
『この前言ってたこと、もっと詳しく聞きたいんだけど。』
『あ〜、存在に気づかないってやつ?あれ冗談だよ!信じてたの???』
この時僕は確信した。あれは冗談じゃないってことに。サヤの目は、少しも笑っていなかったから。ここで引き下がってはダメな気がした。他人に興味を持つことを避けて生きてきた僕は、はじめての感情に戸惑いながらも質問を続けた。
『サヤ、僕は中途半端なノンフィクションは描きたくないんだ。』『だから言ってんじゃん普通にいじめられてたんだってば〜。』
僕はサヤを真っ直ぐ見て、もう一度聞いた。
『本当に?』
サヤは目を泳がせて俯いた。僕の目を見ないように。
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