#12 師匠?
「うわ、何ですかそれ」
「明かりだよ?助かるでしょ」
刀を持った柊が、僕に刃を向けて後を付いてくる。
「あの、
「あ?ああホントだっ!逆向きで持てばいいんだよね」
「オッケーです。なかなか、雷属性でも明かりになるんですね」
「そりゃ電気だからねー。あ、でもMPがなくなっちゃうよ」
「柊は
「あ!?言ったね、魔法バカのおにぃには言われたくないよ!」
「魔法バカって……いいや、とりあえず進みましょう。どこかに出口があるはず」
洞窟の中は一本道だ。
辺りあるたくさんの穴の中から、コウモリのような生物がこちらを見ている。襲われるような気配はないけれど、なるべく警戒して進む。
しかし驚く程何もない、アーリエましてや魔物も生息していない。数百メートル歩くが景色が変わるわけでもなく、足音と水の流れる音が聞こえるだけ。
本当に出口があるのか疑わしくなる。
「本当に出れるのー?」
「さぁ、どうでしょう。道がこれしかない訳ですから、進むしかありませんよ」
「だねー、でもなんでこんな場所に」
「それは僕に聞かれても分からない……って、あれは炎?」
「ん?あぁ──松明だよ!人が居るんじゃないかな」
「よし、もう少し頑張って歩きましょう」
段々と、辺りの景色が変わり、ゴツゴツした不規則な石の道から、石のレンガと松明で整備された道へと差し掛かる。
もう炎は必要ないだろうと、クナイを仕舞う。少し進むと、奥の突き当たりに階段が見えた。他に道がないことを確認すると、恐る恐る登っていく。
出口はすぐだった、階段を登り始めて数分、何があるわけでもなく外に辿り着く。
「出たねー」
「随分あっさりと、トラップも無かったですよ」
「山?」
「うーん、微妙ですね」
あたりは鬱蒼とした木に囲まれている、木々の隙間から見える景色、草原が大分下に見えることからきっと高さのあるところだと推測できる。
後ろには滝が流れていて、僕たちが出てきたところを見ると古い遺跡の様に見える。明らかに、知らない場所だ。
「よく眠れたか?兄妹よ」
突如、背後から声が掛かる。
「なに!?」
「誰ですか!」
反射的に距離を置いた。
「って、貴方は──マグルさん!?……そう言う事ですか、僕たちを連れ去って、一体どんなつもりですか?」
「ええ?この人が、私たちを?」
「──真実。しかし悪く思う
思い出した、僕はこの人に気絶させられて。何が目的?身包みを剥ぐ訳でも、殺すのが目的でも無さそうだ、であればとっくに僕たちに被害が出てないのはおかしい。
ではそれ以外……でも思い付かない、こんな山奥に連れ込んで。一体何をしようと言うんだ。
「目的は?」
「そうだよ!私たち、ラクトちゃんと冒険してたんだよ?勝手にこんな所、一体なんで?」
「ふむ、それは申し訳ないと思っている」
「じゃあ何故?そこまでする程の理由が?」
全く真意が見えない、なんなんだこの人は。
「無論、そうでなければこの様な事はしない。俺はお前達を強化する為にここへと連れて来た」
「強化!?」
「簡単に喰いつかないでください。それで、納得のいくように説明をして下さい」
「……強者である俺が認めたのだ、理由などそれだけでいい。黙って着いてくればいい」
「一体何なんですか、全く意味がわからないですよ」
「ねぇ、強化って何!?」
「だから──柊、簡単に人を信用してはいけない、この人が何を企んでるかも分からないのに」
そうだ、いきなりそんなこと言われて信じるなんて馬鹿だ。僕は巻き込まれるのはごめんだ、絶対に碌なことにならないのは分かりきっている。冒険だって、僕にとっては生活するための手段の一つに過ぎないのだから。
強くなりたいとも思わないし、裕福な暮らしがしたいわけでもない、柊が普通に生活出来る様にこの世界の常識を知り普通の生活をさせてあげようとしてるだけだ。
「でも、この世界では強くならなきゃ何も出来ないよ?誰も守れないし、誰も救えないよ」
「
「そういうんじゃないってば!でもね、私は強くなりたい!話に乗ってみるのも悪くないでしょ!」
「強さを求める、貪欲な姿勢。見事なものだな──よかろう、鍛えてやろうではないか。……兄よ、お前はどうする?」
ああもう、本当に柊は馬鹿なのか。
自分から巻き込まれて、何かが起こってからでは遅いって言うのに。
……だから片時も目が離せないのだけど、本当に仕様が無い妹だと、心の中で毒を吐く。
そんなこと言われたら、もう僕に他の選択肢はないって言うのに。
「柊が心配です、僕も受け入れます。但し、僕たちを傷付けないのが条件。それが守れないなら、僕たちは逃げる。それでいいですか?」
「逃げる?抜かせ、できる訳が無い。しかし約束は守る、お前たちの安全はこの俺様が保証するさ」
「決まり、ですね」
かなり不本意な状況だけど、マグルさんに従う方が安全だろう。生きる上でしょうがなく受け入れたというだけだ。あくまでそれだけのこと。
「いいだろう!今この時より、お前達は俺の弟子であり、子供達だ!覚悟するんだな」
「なんで子供なんですか、おかしい人ですね」
「あははは……!はぁ、疲れたー、休みたいよー」
「そうか、後に色々と説明をする。まずは俺の家へとこい。話はそれからだ、俺の手に掴まれ」
「こうですか」
「よし、では行くぞ!
反射的に目を閉じる、この手の魔法はかなり苦手だ。
一瞬だけだけど、目眩がする。
この世界でくらい、ゆっくりさせてほしいものだ。
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