きずあと~私が壊れた理由~

@72nanase

第1話 告白は突然に

「ニコさん、この後、朝まで一緒に過ごそう?」


ニコは、思わず耳を疑った。


今、この人は何と言った?


今のが本気なら、人数あわせで行った合コンで、まさかのお持ち帰りフラグがたったという事になる。

初めての経験に、ニコは一瞬固まった。

こういう時は、何と返すのが正解なんだろうか?

そもそも、この男、カイトが本気かどうかさえ計り知れない。

たちの悪い冗談だと言われた方がまだ現実味がある。

そんなことを考えながら、ニコは、固まったままなんとか口にした。


「本気?」


「本気だよ。ニコさんのこと、俺、気に入ったから。信じられないと思うけど、一目惚れだから」


耳を疑った。

一目惚れ。

自分とは縁遠いと思っていた単語である。


「ニコさんのこと、もっと知りたい。俺のことも、もっと知って欲しい。だから、今夜は帰したくない。......ダメかな?」


低い、甘い声で囁かれた台詞は、カイトが言うとまるで違和感がない。

サラサラの髪、切れ長の目、キレイな肌。

モデルみたいだなとニコは思う。

こんな男性から、一目惚れしたから帰したくないなどという台詞を言われるなんて。

どういうことだ。

何かのドッキリか?

そう言われた方がよほどしっくりくる。


「!?」


唐突に、腕に包まれた。

ニコの小さな体は、すっぽりとカイトの内側に収まっている。


「かか、カイトさん!?」


「俺、本気だよ?ニコさん、今日から俺の女になってよ」


意味がわからず、ニコは混乱しながら顔を真っ赤にして固まったまま動けない。

どうして今日初めて会ったばかりのカイトに、そんな事を言われるのか。

まったく心当たりがないのである。


「返事がないってことは、いいってことだよね?じゃあ、行こっか」


否定する暇もなく、ニコはカイトに引っ張られ、ホテルへと連れてこられた。

そして、あっという間に、気が付けばホテルの室内にまで連れ込まれてしまった。

あっけにとられるニコを、カイトが怪しく微笑みながらベッドに押し倒す。


「ニコさん、好きだ」


「っ!?」


熱いキスがニコを翻弄する。

舌を絡められ、胸を揉まれる。

体温が急上昇したその瞬間だった。


「うっ......!!」


ニコの全身を、言い様のない激しい痛みが襲った。

感じる、全身を這い回る舌の感触、そしてあちこちを触れまくる手の感触に、膣の中を乱暴にかき回される感触。

それは現実ではなくフラッシュバックだ。

過去、ニコを襲った忌まわしい『事件』の。


「......い......や......!やめ......て!いやぁ!!」


青い顔で怯えるニコを、カイトの酷く戸惑い、驚いた顔が覗き込む。


「ニコさん!?ニコさん!?」


酷く心配そうなカイトの叫びを遠く感じながら、ニコの意識は途切れた......。


続く

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