花火で遊ぼう!(15)

 だから俺やお袋は、一体何がどうなったら、親父が〝食レポ〟を披露するのか、その引き金がどこにあるのかが分からない。


 そんな親父は今も、自分の横でおいしそうにスイカを食するミオの、その無邪気さに目を細めてこそはいるが、特に何か言葉をかけるつもりはないようだ。


 俺が親父の立場なら、「ミオくん、おいしいかい?」くらいの話はするんだけど、どうしてこんなに口数が少ないんだろう。


 ただ単にシャイなだけなんだろうか。


 なんて推察をよそに、親父はお袋が仕入れてきたスイカの二切れ目を手に取り、モシャモシャと咀嚼そしゃくしては、小鉢に種を入れる作業を黙々と繰り返している。


 まぁそうやって食が進んでいるということは、このスイカがうまいという証明なのだろうが、せめてお世辞でもいいから、この黄色い果肉の持つクリーミーな甘さに、一言くらいあげてもいいんじゃないかと俺は思うのだ。


 そう考えると、さっきの晩ご飯でイカの握り寿司を食った際に、柄にもなく饒舌じょうぜつだったのは、かわいい孫のミオを生で見られたがあまり、思わずテンションが上がってしまったからかも知れないな。


「はー、よく冷えてるし、何より甘くてうまい。久しぶりに黄色いスイカを食ったけど、これくらい甘いという事は、かなり糖度の高い品種なんだろうな」


「うんうん。ボクもお兄ちゃんと同じ事思ってたよー。口の中であまーいスイカがとろけて食べやすいから、どんどん進んじゃうね」


「うふふ。この日のためにブランドもののスイカを選んできたから、ミオちゃんに喜んでもらえて、お祖母ちゃん嬉しいわ」


 ミオにスイカの味を絶賛されたお袋は、すっかり気を良くしたようで、終始笑顔のまま、各々のグラスに、柚月家謹製の麦茶を注いでいった。


「ちょっくら塩をかけて食べてみようかな。ただでさえ甘いんだから、要らないような気はするけど」


「お兄ちゃん、スイカにお塩かけるの?」


「うん。塩でスイカの甘みがどう変わるのか興味があってさ。あと、会社の仲間への土産話として、いいネタになるかと思ったんだ」


 という話を聞きつつ、頷きながらスイカを食べ進めていくミオは、大きな一切れを少しずつかじっては、そのつど種を小鉢に捨てている。


 スイカにつきものである種の処分は、漫画やアニメでは、口の中で種だけを器用に分別して、口からマシンガンの弾か何かのように飛ばす描写がある。


 が、現実でそれをやると、後で庭にぶちまけられた種を掃除する羽目になり、至極面倒な手間を要するし、何より不衛生なので、真似をするのは正直お勧めしない。

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