ショタっ娘のお祭りデビュー(40)
*
「それでミオちゃん、一本の釣り針で水ヨーヨーを三つも取ってきちゃったの? すっごぉい」
大量の釣果を抱えてヨーヨー釣り屋さんを後にした俺たちは、母親と一緒に綿飴屋さんを訪れている、里香さんと合流していた。
「うん。ボク、三つ釣ったらご褒美で一つ貰えると思ってたんだけど、勘違いしてたみたい」
ミオははにかみながらそう答えると、ペロッと舌を出す。
「だから、一つはお兄ちゃんにあげたんだー。でね、さっきまで『二人でボヨンボヨンしようね』ってお話をしてたの」
「そうなんだ! お兄さん、ミオちゃんとお揃いなんですねー」
「はは、まぁね」
俺はミオに抱きつかれたまま、右手の中指に通した輪ゴムを伸縮させ、水ヨーヨーを操って見せた。
大の大人が、こういうおもちゃで遊ぶ姿を披露するのは多少気恥ずかしいものがあるんだけど、せっかくミオが一生懸命取ってくれたんだから、めいっぱい楽しまなくちゃな。
「残りの一個は里香ちゃんにあげるー。はいこれ!」
「わぁ、ありがとうミオちゃん! あたし、これ欲しかったんだぁ」
里香さんは、出目金が泳ぐビニール袋をお母さんに預けると、貰ったばかりの水ヨーヨーで、ミオと一緒に遊び始めた。
ほんとに仲が良いんだなぁ、この子たちは。
「すみません、柚月さん。うちの子ったら遠慮が無くて……」
里香さんのお母さんは苦笑いしつつ、申し訳無さそうに頭を下げる。
「いえいえ、お気になさらないでください。たくさんあっても手持ちぶさたになっちゃうし、貰ってくれた方が僕らも助かりますから」
「ありがとうございます。ミオちゃんのような、とても優しいお友達に恵まれて、里香は幸せ者ですわ」
「いやぁ。こちらこそ、ミオが転入した時から、里香さんはずっと仲良くしてくれていると聞いて、とてもありがたく思っています」
「まぁ……そうだったのですね。里香は、そういう大切な話を全然しない子なもので。失礼などございませんでしたか?」
「え! 失礼だなんて滅相もない。ミオも里香さんと仲良くなれて、すごく喜んでいますよ」
「でしたら良いのですけど。柚月さん、もし里香が粗相をした時は、すぐに仰ってくださいね」
「は、はい。いや、きっと大丈夫だと思います。あの二人の仲ですから。うん、間違いないです」
「うふふ……お優しいんですね」
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