ショタっ娘のお祭りデビュー(28)

 ショタっ娘ちゃんの黄色い声援を受けた俺はコルク銃を脇に抱え、弾込めを行う。


 射的自体は苦手じゃないんだが、ただ撃ち落とす景品にも謎の安定感があるからなぁ。


 あとはいい景品ほど的が小さくなるってのもあるし、ミオが喜んでくれるような成果を上げられるかどうか。


「弾込めはこれでよしと。ところで、このお店で一番いい景品って何ですか?」


「一番はA賞の携帯ゲーム機だよ! お次がそこにある、巨大ワンちゃんのぬいぐるみね。それから、C賞が猫ちゃんコスプレセットで……」


「コスプレセット! 了解、C賞狙います」


 景品の説明を聞いていた俺が食い気味で返事をすると、射的屋のお姉さんは驚いた表情で言葉を詰まらせる。


 なぜ欲しいのか分からないから、そういう反応になるのだろうが、そりゃミオに猫ちゃんの格好をさせたいからに決まっている。


 かねてから、お魚大好きなうちの子猫ちゃんに、猫耳と尻尾、それから肉球付きの手袋を付けてもらって、いっぱい甘えさせたいと思っていたのだ。


 そのためのグッズ探しが捗々はかばかしくなかっただけに、この好機を逃してしまうと、また俺の野望が遠ざかってしまいかねない。


 何としてでもまでには、猫ちゃん変身セットを獲得したいのだ。そのためにも、今日この場で、目標のC賞を撃ち落とさなくては。


 とはいえ、C賞の的もなかなか小さいなぁ。果たして残り二発で、うまく当てられるだろうか。


 もっとも、このチャンスをものにできるのならば、金に糸目はつけないつもりなんだけど、やっぱりミオにいいところを見せたいよなぁ。


 俺の腕がなまってない事を祈るしかないな。


「う。外した……」


「あー残念! 今度はよく狙ってね、お兄さん」


「照準合わせはうまくいったはずなんだけど、微妙な手ブレがあるのかなぁ」


「ねぇお兄ちゃん」


「ん、何だい? ミオ」


 コルク銃に最後の弾を込め、C賞に狙いを付け、いざトリガーを引かんとしていると、ミオが無邪気な顔でこんな事を尋ねてきた。


「コスプレってなぁに?」


「え、えーとな。例えば、プリティクッキーの変身セットがあるだろ」


「うん」


「簡単に言うと、あれの猫ちゃん版みたいなものかな」


「んー? じゃあお兄ちゃんは、猫ちゃんに変身したいって事?」


「それ、思い浮かべるだけでゾッとするな……さすがに俺には似合わないよ」

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