初めてのペットショップ(2)

「えと。ボク、お兄ちゃんにも一緒に来て欲しいな」


「え。俺も?」


「うん。お兄ちゃんと二人で見たいの。……ダメ?」


「ダ、ダメなんかじゃないよ。それじゃあ一緒に行こう。な」


「ありがとう、お兄ちゃん!」


 ペットを見られる事以上に、俺と一緒に行ける事がよほど嬉しかったのか、ミオは席を立って抱きついてきた。


 よく考えれば当たり前だよな。恋人同士という関係上、俺はいいから一人で行っておいでよって言われたら、きっと全世界の恋する乙女はガッカリするだろうから。


 限りなく女の子に近いショタっ娘ちゃんのミオにとっても、それは同じ事。世界に一人しかいない親であり、同時に彼氏でもある俺と一緒に見に行きたいと思うのは、ごく自然な願望なんだ。


 ミオがお願いしてくれなければ、そのまま気が付かないところだった。危ない危ない。


 こういう鈍感で女心の分からない一面があるからこそ、俺は今日までモテてこなかったんだろうな。


 一体親父は、どうやってお袋の心を射止めたんだろう。同じ血を受け継いでいるというのに、ここまで差が出るとは。


 もしもミオがいてくれなかったら、俺は今ごろ独りで、非モテ生活を継続していたに違いない。そう考えるとゾッとするなぁ。


「そう言えばお兄ちゃん、ジュースは飲まないの?」


「ん? ああ、何だか思ったほど喉が渇いてないみたいでさ。だから一本買うほどでもないかなって」


「じゃあ、ボクのをあげるー」


 ミオはそう言うと、自分が飲んでいたオレンジジュース缶の下半分に残った水滴を拭い、笑顔で差し出した。


 先ほど、全部飲み終えたとばかり思っていたミオのジュースは、まだ残りがあったのだ。


「いいのかい? ミオ」


「うん。ボクはもうたくさん飲んじゃったから、お兄ちゃん飲んでー」


「ありがとう。それじゃあいただくよ」


 ミオからよく冷えた缶を受け取った俺は、飲み口に唇を当て、少しずつオレンジジュースを流し込んでいく。


 うん、オレンジの果汁が濃縮されていてうまい。


 ところで。俺は今しがた、ミオが飲んでいたジュースにそのままに口をつけたから、二人はをしたという事になる。


 俺たちは付き合っているが、まだ口と口の接吻どころか、ほっぺにチューすらも交わしていない。そこへ来ての間接キスは、果たして、この子に何らかの影響を与えたりするのだろうか。

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