再会、そして(11)

「ん? どうした?」


「お兄ちゃんとボクで、レニィ君たちと一緒に遊んであげられないかな」


「うーん。そうしてあげたいのはやまやまなんだけど、もう夕飯時だぞ。今からでも開いている施設といえば、ゲームコーナーか、カラオケルームくらいしか……」


「じゃあ、そのカラオケに連れて行ってあげようよ!」


 これは意外だ。さっきまでレニィ君の事を警戒していたであろうミオが、打って変わって、あえて如月兄弟をカラオケに誘おうと提案してきたのである。


 察するに、ミオも、レニィ君たちの今置かれている境遇が、自分の生い立ちに重なって見えたのかも知れない。


 だから、このまま放ってはおけなかったのだろう。


「ね、いいでしょ?」


「そりゃまぁ、ミオがOKならぜひ誘ってあげたいけどさ。この子たちは時間的に大丈夫なのかな」


「レニィ君に聞いてみようよ。ねぇねぇレニィ君」


「……は、はい! 何でしょうか?」


「夜になったら、ボクたちと一緒にカラオケに行かない?」


「カラオケ、ですか?」


「うん。弟の子も連れて行ってさ、みんなで歌おうよ。きっと楽しいよー」


 カラオケ未経験のミオが、レニィ君を元気づけようと、一生懸命気を回してくれている。


 何かの折に触れる度に思うが、ミオはほんとに心の優しい子だよ。


 この子が学校に通い出してから、男女分け隔てなく友達が作れたのも、こういう気配りがしっかりできているからなんだろうな。


「そういうわけでどうかな、カラオケ。時間さえ大丈夫なら……だけど」


「ありがとうございます、すごく嬉しいです! きっと弟も喜んで来ると思います」


「そっかそっか、そりゃよかった。んじゃあ、温泉から上がったら、時間と待ち合わせ場所を決めちゃおうか」


「はい、ぜひ!」


「ところで弟くんは?」


「あ。ユニィなら今サウナに入ってます。あの子は珍しいものが好きだから」


 レニィ君の弟はユニィ君っていうのか。その子もやっぱり、母親似だったりするのかな?


 というか、今日びサウナってそんなに珍しいかなぁ? と思ったが、両親が常に不在でどこにも連れて行ってもらえなかったら、こういう普通の温泉施設自体が新鮮に見えるんだろうな。


 そういう点では、うちの青髪の子猫ちゃんにも似たようなところがあるから、分からない話ではない。


 我が家に迎え入れて以来、初めて見るものには何にでも興味を持って、納得がいくまで俺にいろいろ尋ねてくるし。


 見知らぬものに対して好奇心を抱き、誰かに教えてもらったり、実際に体験したりするのは、大人になるための社会勉強として、大変有意義な事だ。

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