再会、そして(3)

「おー。手で持ってもクリームがこぼれないじゃん。これは食べやすそうだな」


「そだね。いただきまーす」


 生地とクリームの風味を味わうべく、俺たちは試食の亜麻色うさぎを口に運び、もぐもぐと噛みしめる。


「ん! これはうまい!」


「甘くておいしーい」


 食べた瞬間、二人の意見がピタリと一致した。


 カスタードクリームにかぼすの果汁が配合された事で、ただひたすら甘いのではなく、酸味の効いた、控えめな甘さになっている。


 やはりかぼすの香り高さは格別だ。


 この甘味と芳香が食欲をそそるもんだから、一度食べ始めたら、きっと何個でもいけてしまうだろう。


 そしてクリームを包む生地には米粉が使われており、そのおかげで〝ふわっと仕上げ〟になっているため、ウサちゃんの柔らかな毛並みを再現しているかのような食感が楽しめるのだ。


 これはみやげ物というだけではもったいないぞ、何なら我が家の棚に常備しておきたいくらいうまい。


「ミオ、すごくおいしいよ。これならきっと、会社のみんなにも喜んでもらえるよ」


「ほんと? よかったぁ」


「ちょうど二十四個入りのがあるし、これ買って帰ろう。あと……」


「ん? あと?」


「俺たちが食べる用に、もう一箱買っていこっか」


「それは嬉しいけど、いいの?」


「こんなにおいしいお菓子、試食とおみやげだけで済ませるのはもったいないからね。家に帰っても一緒に食べようよ」


「うん! ありがとうお兄ちゃんっ」


 ミオは微笑みながら、俺の腕にぎゅーっと抱きついた。


 お金のかかるものに関しては、ミオは気を遣って遠慮したりする事があるから、こういうのは俺の方から進んで買ってあげないとな。


 という事で、ミオが選んでくれたおみやげの、亜麻色うさぎは二箱お買い上げだ。


「よし。後は、佐藤へのおみやげを買うだけだな」


「ねぇお兄ちゃん。佐藤さんって何が好きなの?」


「そうだなぁ、あいつが好きなのは女の子だね」


「え……」


 ついうっかり、あいつがほんとに好きなものを答えた事で、それを聞いたミオは、その場で凍りついたように固まってしまった。


 まずい、ここはうまく取りつくろわなければ。


「あっ、いや今のは違うんだよ。女の子が喜びそうなものが好きかなって意味でさ」


「そうなんだ。じゃあかわいいグッズが好きって事?」


「まぁそうなるかな」


 そうなるかな、じゃないよ、何言ってんだ俺は。


 発言の修正を試みたはいいものの、ものすごく適当な事を口走ったせいで、どんどん佐藤のイメージが誤った方に形成されていってしまっている。

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