再会、そして(2)

「お兄ちゃん、会社の人って何人くらいいるの?」


「そんなに大きな会社じゃないから、だいたい百人ちょっとってとこだな」


「じゃあ、おみやげもその人の分だけ買うの?」


「いやいや、さすがにそこまではしないよ。俺がいる部署の人にだけ渡すつもりだから、まぁ二十人分くらいかな」


「それでも二十人いるんだねー」


「うん。その二十人に配れる、お菓子のおみやげが欲しいんだけど……」


「それじゃ、いっぱい入ってるのがいいんだよね」


「まぁそうだな。いっぱい入っていて、それでいておいしいのがベストかな」


「分かったー。ボクも探してみるよ」


 赤の他人へのみやげ物選びなんて本来つまらん作業だろうに、ミオは進んでお手伝いをしてくれる。


 この子はほんとにできた子だよ。


 俺もミオにばかり頼っていないで、佐藤と、会社のみんなに喜んでもらえそうな物を探さないとな。


 ざっと見た感じだと、空港とか駅の売店に並ぶような、箱に入った銘菓は割といろいろある。


 えーと、これは佐貴島バウムっていうのか。


 輪っか状のバウムクーヘンを小さく切って、小袋に入れて箱に詰めてあるんだけど、今ひとつパンチが効いていないんだよなぁ。


 きょうびバウムクーヘンなんてコンビニですら買えるし、味に何らかの工夫が欲しいんだよな。


 それから、こっちのお菓子はサキ・マドレーヌって名前なのか。


 ホタテ貝みたいな形をした小さな焼き菓子、マドレーヌが三十六個入り。


 数としては申し分ないな。


 マドレーヌは個人的に好きだし、製造元や販売元はこの島の製菓メーカーだから、俺が重視する条件もクリアしている。


 会社の人へのみやげ物としては、これで充分かなぁ。


 一応これはキープという事で、他にもどんなお菓子があるのか探してみよう。


「お兄ちゃーん」


 しばらく銘菓コーナーを物色していると、ミオが包装紙でくるんである、大きな箱を持って戻って来た。


「これ、どうかな?」


「どれどれ……〝亜麻色あまいろうさぎ〟?」


「かわいいウサちゃんのお菓子だよー」


 包装紙に描かれているお菓子の絵は、その名の通り、丸まったウサギの形をしている。


 カスタードクリームを亜麻色に練った生地に包んだ商品らしく、そのカスタードクリームにはの果汁が混ぜ合わせてあるのだそうだ。


 かぼすといえばもうお馴染み、ここ、佐貴沖島さきのおきしまの特産物だから、みやげ物としてはなかなか的を射たチョイスだと言える。


「いいね、これ。見た目がかわいいし、数もたくさん入ってる」


「でしょ? でね、あっちに試食できるコーナーがあるんだよ」


「へぇ、試食もできるんだ。んじゃ、ちょっと食べてみようか」


「うん」


 ミオに手を引かれ、亜麻色うさぎの箱が積んであるコーナーにやって来ると、そこでは透明なアクリル板で出来た箱の中に、四分の一サイズにカットされたお菓子がたくさん詰まっていた。


 どうやらこれが、試食できる亜麻色うさぎのようだ。

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