初めての通知表(7)

「ミオ。コスモスが好きなら、コスモスのグッズを買ってあげよっか?」


「グッズ?」


「うん。例えばピンバッジとかどうかな」


「ピンバッジってなーに?」


「おしゃれをする道具だよ。例えばランドセルに、ミオの好きな赤いコスモスのお花のバッジを付けたら、よりかわいくなるかなと思ってさ」


「いいね! ランドセルかわいくしたーい」


 思ったより好感触のようで、ミオはすごく喜んでくれた。


 ミオの背負うランドセルは、普通に真っ黒なだけで、刺繍や模様のプリントなどが一切無いシンプルなタイプだ。


 そのシンプルなランドセルに赤いコスモスを型どったピンバッジを付けてみたら、きっと似合うだろうし、よりショタっ娘らしさに磨きがかかると思うのである。


 さすがにお花のヘアブローチまで行くと校則に引っかかるだろうから、控えめにピンバッジを提案してみたのだが、ミオも乗り気で安心した。


「すごく綺麗にできてるやつを、幾つか買ってみようか。ランドセル用だけじゃなくて、リュックサックに付ける用のやつとかもさ」


「そんなにたくさん、いいの?」


「もちろん。ミオがお勉強を頑張ったから、そのご褒美だよ」


「でも、お金は大丈夫?」


 と、我が家の家計を心配そうに尋ねてくれるミオは、やはりしっかり者だ。


「大丈夫だよ、このくらい。後でパソコンのネット通販を使ってさ、どんなのがあるか見てみようよ」


「うん。いつもありがとね、お兄ちゃん」


 ミオは少し控えめな笑顔を見せた後、両手で抱いた俺の腕に頬をくっつけた。


「ところでミオ、学校の事で一つ聞きたいんだけどさ」


「ん? なーに?」


「終業式の後、先生から何か、本みたいなのを渡されなかった? 宿題というか」


「宿題ならもらったよー。もしかして、お兄ちゃんも見たいの?」


「うん。俺が子供のころとどのくらい違うのか興味があってさ、実物を見てみたいんだ」


「分かった。すぐ持ってくるから、ちょっと待っててね!」


 ミオはソファーから立ち上がり、元気よく自分の部屋へ走って行った。


 それから程なくして、ミオが二冊の本らしきものを抱えて戻ってくる。


 いや、一冊は本というよりノートかな?


「はい。これが学校でもらってきた宿題の全部だよ」


「ありがとう。ちょっと見せてもらうね」


 ミオに手渡された冊子の一冊目は、やはりノートだった。


 それは有名な文具メーカーが出しているノートで、タイトルには〝日記帳〟と書かれている。


 つまり学校としては、夏休みの期間中、日記を欠かさずつける事も、継続する力をつちかうカリキュラムとして重要だと考えているのだろう。


 まぁ、これは定番の宿題だよな。


 日記帳をパラパラとめくってみたが、特にイラストを書く欄は設けられていないので、その日の天気や気温、出来事などを文章だけでしたためなさい、というシンプルな課題になっているようだ。


 これは継続する力もさることながら、本人の国語力、および文章力も養ういい機会になるかも知れないな。

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